与党大敗!株価急反発~今後は?

与党大敗!株価急反発~今後は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2024/10/29

日米での選挙&米大型テック株の決算発表を控え、日経平均は軟調

10月第4週(10/21-25)の日経平均は、前週末比1,067円83銭安(-2.74%)と週足ベースで続落し、心理的節目の38,000円を下回りました。日本の衆議院選挙や、米国の大統領選挙、中東情勢の悪化懸念など地政学リスクが意識され、投資家がリスクを取りづらい状況が続きました。25日(金)の東証プライム市場の売買高は3.1兆円台と本年最小の商いを記録した形です。また、マグニフィセント・セブンをはじめとする米大型株の決算発表を翌週(10月第5週)以降に控え、業績動向を見極めたいとする動きが強まったことも株価を抑制したと思われます。

一方、日本でも23日(水)のニデック(6594)の決算発表を皮切りに、決算発表シーズンが本格的にスタート。地合いが悪い中でも好決算を発表したニデックが堅調となるなど好業績銘柄への物色意欲の強さも見受けられました。日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/18~10/25・図表7)でも、同社は2位にランクインしています。首位は、複合機器等のメーカー、コニカミノルタ(4902)です。22日(火)引け後、旧村上ファンド出身者らが設立した「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」というアクティビストが、純投資を目的として同社株を5.81%取得したことが材料視されました。なお同ファンドは既に、同じく複合機器を扱うリコー(7752)の株式を19.5%取得しています。また、円安が急進行したことで、海外売上高比率の高い輸送用機器企業にも買いが入った形です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/18~10/25・図表8)には、石破首相誕生以降、防衛関連銘柄として株価が堅調であった重工大手3社がランクイン。期中、自民党が衆議院選挙で苦戦するとの見方が拡大し、売りにつながった格好です。なお実際、10/27(日)の投開票となった衆議院選挙で、連立与党は過半数を獲得できませんでした。28日(月)の同3社の株価は前日比マイナスとなりました。

10月第5週(10/28-11/1)には、米大型テック株の決算発表が相次ぎます。29日(火)は生成AI向けも手掛ける半導体のAMD、傘下にGoogleを擁するアルファベット、30日(水)はマイクロソフト、31日(木)はアップルの7-9月期決算が発表される予定です。生成AI関連での業績や見通しが注目される中、市場の高い期待を超えることができれば、関連銘柄を含めて株価の一段の押し上げが期待されます。先んじて発表されたTSMCの決発表では、堅調な業績見通しが示されており、引き続き旺盛な需要が業績見通しを押し上げると想定されます。

 

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/18~10/25)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/18~10/25)

与党大敗!株価急反発~今後は?

10/27(日)投開票の第50回総選挙が終わりました。図表9は獲得議席数を、総議席数に対する比率で示したものです。

与党(自民党と公明党)は大きく議席を減らし、合計獲得議席数の比率は46%過半数を割り込みました。野党は立憲民主党、国民民主党等が議席を伸ばし、共産党までを含む全体として過半数を確保しました。

総選挙の日から30日以内に特別国会が召集され、新しい首班指名選挙(※)が行われることが憲法で定められています。与党が過半数を割ったので、1回目投票では決まらないかもしれません。このままいくと、2回の投票を経て、自公の少数与党による第2次石破内閣誕生というのがメインシナリオかもしれません。

※衆議院・参議院における第1回目投票で過半数を得た候補者が首相に指名されます。該当者がいない場合は、2回目投票で上位2名による多数決で決まります。衆議院と参議院の結果が異なる場合は、衆議院の意見が優先されます。

図表9  衆議院選挙前後の獲得議席率

自公政権が継続したとして、他の野党とどの程度の連携ができるでしょうか。拡大連立政権になるか、パーシャル連合(政策ごとの連合)になるかいずれなのでしょう。

国民(国民民主党)、維新(日本維新の会)とは、所得の向上や安全保障・防災、教育等で政策合意できる点が多いように思われます。無論、政権奪取に燃える立憲民主党が野党連合を成立させ、新たな政権与党をつくるシナリオも残ります。この場合も、国民や維新の政策をどこまで吞み込めるのかが大きなカギを握るでしょう。

なお、自民党内から造反が起こる可能性もゼロではないようです。

図表10 日本維新の会と国民民主党、政策要点

総選挙翌日の東京株式市場では、日経平均株価が691円高しました。与党大敗の直後としては意外な反応にみえますが、衆議院が解散された10/9から総選挙直前営業日の10/25日まで平均株価はすでに1,364円下げていました。

「選挙は買い」のアノマリー(図表11)から考えると、今回の選挙前の下げは異例であったかもしれません。選挙も終わりイベントリスクが後退し、悪材料もいったん出尽くしたたということかもしれません。

やや難しい反応を見せたのが防衛関連株と思われます。全般株高の10/28、三菱重工業(7011)やIHI(7013)、日本製鋼所(5631)など、いわゆる防衛関連銘柄は逆行安となっていました。石破首相イコール「国防通」というイメージがあり、利益確定売りが先行した可能性があります。ただ、防衛力強化をうたっているという点で、自民と国民・維新等との間に差は少ないとみられ、やや過剰反応に見えました。

株式市場は一般的に政治の安定を好み、自民党を中心とする政権与党が選挙で勝つことに好意的な面があるようです。前回まで過去4回の総選挙で自公が300前後の議席を獲得してきたことは、日本株の上昇に寄与してきたかもしれません。しかし、政治の安定が続くことで、膿がたまることもあるでしょう。それを一回出すことができるのであれば、株式市場も当面の不透明感を乗り越えられるのではないかとみられます。衆議院選挙後の株価に過度の懸念は不要と思われます。

政治の安定を得る意味でも、所得の向上、安全保障・防災、教育等、与野党で政策合意できる点が多い分野についてはむしろ、課題の解決が前に進むかもしれません。

図表11 衆議院選挙と日経平均株価

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