「トランプ関税公表」後の日経平均株価は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/03/25
バフェット買い?商社などバリュー株が上昇をけん引し、日経平均は続伸
3月第3週(3/17~21)の日経平均は、前週末比632円96銭高(+1.7%)と週足ベースで続伸。週初、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資ファンドのバークシャー・ハサウェイが、五大商社株の買い増しを行ったことが判明しました。これを受け、商社株を中心に、銀行株や電気機器などのバリュー株が上昇をけん引した格好です。週半ば、日米で中銀会合が開催されましたが、どちらもサプライズはなく、週末にかけ、新しい手掛かり材料に乏しい展開が続きました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/14~3/21・図表7)でも、卸売(商社)や銀行など、バリュー業種が多数となりました。防衛大手も引き続き堅調さを維持し、首位は三菱重工業(7011)でした。トランプ政権は、日本やNATO加盟国に対し、軍事費増額を求めており、「防衛」は当面、市場の関心を集める状態が続くと想定されます。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/14~3/21・図表8)には、AIや半導体関連銘柄が複数ランクインしました。足元の下落を受けた買い戻し等により、前週は騰落率上位に掲載されていましたが、米テック株への売りが再開されたことで、連れ安となりました。
3月第4週(3/24~3/28)の日経平均は小幅続落でスタート。東京株式市場では、3月末に決算期末を迎える企業の配当取りを目的とした買いが、下支え材料となり得るでしょう。
米国株式市場は、テック株が上昇をけん引し、大幅高でスタート。米政権が4/2(水)から導入を準備している相互関税に関し、政府関係者による報道を受け、リスクオンの買いが発生しました。同報道によると、相互関税の対象予定国は、米国にとって貿易不均衡が大きく、不公正な貿易慣行を行っていると指摘する15カ国「ダーティー15」に限定されるとのことです。多くの国に対し、軽減措置を認めるとの見方が広がりました。一方、財務長官の過去インタビューから、日本は「ダーティー15」に含まれており、国内経済においての相互関税への懸念は払拭されていないと考えられます。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/14~3/21)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/14~3/21)

「トランプ関税公表」後の日経平均株価は?
4月以降の内外株式市場はどうなるでしょうか。その際、おもに考えておかなければならないのは「トランプ氏が米大統領を務める現在の投資環境のもとで、市場はどう動くか」ということだと思います。
トランプ氏はすでに、鉄鋼・アルミニウム、メキシコ、カナダ、欧州からの一部輸入品、および中国からの全輸入に対し関税を課しています。4/2(水)には関税政策が強化され、より多くの国々からの対米輸入に対し関税強化が示される可能性があります。仮に、このまま米国が広く、輸入に対する関税を強化した場合、世界経済に悪影響が強まる可能性があります。
影響は、関税を賦課する米国にも表れると思います。輸入品に広く関税がかかることで、輸入品を中心に物価が上昇し、家計の負担が高まるかもしれません。輸入品の価格競争力が弱まることで、国内製造業の競争力が強化される可能性はありますが、新しい工場を短い期間に新設することは難しいでしょう。米国の高い人件費で生産される商品は結局、これまでの輸入品よりも価格が高く、消費者を苦しめるかもしれません。
図表9は、米国時間3/19(水)に結果発表となったFOMC(米連邦公開市場委員会)を経て、短期金利先物市場やFOMCメンバーの政策金利見通しがどう変わったのかを示しています。FRBが4月以降のQT(バランスシートの縮小)の減速を示したことで、短期金利先物市場では利下げ期待が強まった形です。一方、FOMCメンバー19人が予想する政策金利見通しは、中央値こそ「3.75~4.00%」で変わっていませんが、より少ない利下げ回数を見込む人数が増加しています。
これらは「トランプ関税」の影響を織り込んで予想したものとみられますが、短期金利先物市場とFOMCメンバーの見方は割れているとみられ、それだけ、見方が難しいことを示しているといえます。市場は不透明感を嫌いますので、4/2(水)まで市場はどっちつかずの動きになる可能性が大きそうです。
図表9 2025年末に予想される米政策金利~市場とFOMCメンバーが異なる見通し

そうした中、一部報道で、米国への輸入について、自動車や半導体、医薬品は4/2(水)の関税適用が見送られる可能性が伝えられました。ただ、相互関税が実施予定であることは変わらず、「貿易を悪用している」欧州、メキシコ、日本、韓国、カナダ、インド、中国等への課税の可能性が示唆されました。
図表10は前々回の本レポートでも掲載した、米国の輸入国・地域別構成を示したものです。要は、おもな輸入先を狙い撃ちしたもので、関税は米国の輸入額の過半を対象にしたものとなる可能性があります。
関税は、米国の輸入業者が支払い、代金に上乗せされて消費者が負担することになります。その意味では、消費税と似たような効果があるとみられます。関税は米国の税収となり、将来の減税の財源になる可能性があります。幅広い関税は短期的には米国の消費者に打撃になりそうですが、減税の実施により相殺される可能性が残ります。
また、日本にとっては、米国への輸出競争相手に広く関税が実施され、輸出競争力には大きな変化が生じない可能性があります。米国国内では生産できない、たとえば日本しか供給できない付加価値の大きな商品であれば、輸出数量の減少は限定的になるかもしれません。
さらに重要なのは、日本は米国と長い貿易戦争の歴史があり、すでに現地生産も多く進んでいることです。米国で現地生産されている商品であれば、関税は逆に「恩恵」となる部分もあります。
世界は複雑なサプライチェーンでつながっています。米国で生産されている商品でも、その生産過程や部品等に輸入を含んでいる可能性があります。スマートフォンはその象徴例でしょう。米国は関税導入に際し、注意すべき点を多く抱えているとみられます。
米国の関税政策による日本への影響は、意外に限定的なものになるかもしれません。4/2(水)をはさみ、日経平均株価がアク抜けする可能性も十分ありそうです。
図表10 米国の輸入国・地域別構成比(2024年)

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