ユーロ/円が日本株を動かす? サナエノミクスでも米ドル離れは進行か

投資情報部 土居雅紹 植田雄也
2025/10/07
高市自民党新総裁の誕生で日経平均が急騰!
■9月第5週(9/29~10/3)の株式市場動向
・日経平均株価10/3終値は前週末比414円51銭(0.91%)高と週足ベースで続伸。
・9/26~10/1にかけて4営業日続落。10/3に最高値更新。
・日経平均株価の変動要因
①週初は配当落ちで下落スタート:9月29日は3月期決算企業の中間配当落ちの影響で約300円の下押し要因
②週中はリバランス売りと米政府閉鎖リスクで軟調:機関投資家の資産調整売りや政治リスクが重なる
③週末にかけて急反発:米雇用指標の弱さを受けた利下げ期待と米株高が追い風となり、10月3日には832円高で最高値を更新
■ 騰落率の傾向(9/26~10/03)
・上昇率上位:半導体関連株、AI関連株に加えて医薬品が上位に。トランプ大統領が30日、米国内の薬価を引き下げることで合意したことが好感されました。
・下落率上位:小売、自動車が中心。一部小売企業にて、9月の既存店売上高が前年同月比で減少したことが嫌気されました。日銀短観で「自動車」の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業では改善したものの、中小企業で悪化したことが影響しました。
■ 9月第5週のスタート(10/6)
・10/6(月)は終値ベースで約2,175円26銭高と4.7%急騰しました。
・25日線との乖離率が7.5%超:高値警戒感が意識される中、急騰で再び乖離が拡大。短期的な調整リスク懸念と出遅れ資金の綱引きが続きそうです。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/26~10/3)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/26~10/3)

ユーロ/円が日本株を動かす? サナエノミクスでも米ドル離れは進行か
下がる米株と米ドル円相場の影響力
「想定した水準で日経平均の取引が始まらない!?」
最近の寄付きを見て、投資経験が長い方ほどそう感じることが多いかもしれません。かつての日本株は重厚長大銘柄の長期低迷と輸出関連株だけの頑張りが目立つ時期が長く続きました。そのため、
「日本株は米国株の従属変数」
「米国株終値と米ドル円相場を見れば日経平均の始値が分かる」
という見方が広がっていました。
コロナショックで変わった資金の流れ
コロナショックで経済活動が遮断されると、米国株は超大型株主導で水準を大きく切り上げました。さらに第二次トランプ政権では、米ドル離れを促すような政策が続き、世界的な資金の流れに変化が生じています。つまり、これまで米国金融市場に集中していた資金の一部が他市場へシフトし、ユーロ、日欧株や金、暗号資産などの価格上昇につながったと考えられます。
データで見る影響度の変化
図表9は、日経平均の始値と米ドル・ユーロの対円相場、前日のS&P500とドル建金価格の終値を比較したものです。日経平均を「始値」で見たのは、米国株やドル建金価格、当日朝の為替レートの影響を近いタイミングで捉えるためです。大きな流れでは、S&P500と日経平均は似た動きをし、さらに米ドル高・円安になれば日経平均が上がるという関係でした。
図表10では、日次変化率の相関と影響度を数値化しています。チャートで「なんとなく」見える関係も、相関で測ると明確になります。
1.コロナ前(2015年10月~2020年1月)
・米国株終値と早朝の米ドル円相場を見れば日経平均の寄付きが想像できた時期
・日経平均始値とS&P500、米ドル円の相関が高かった
多変量解析による影響度推計:
S&P500が1%動くと → 日経平均は0.62%
米ドル/円が1%動くと → 日経平均は0.85%
ユーロ/円が1%動くと → 日経平均は0.12%
2.コロナ後
・米ドル円相場の影響が顕著に低下、S&P500の相関は維持されるも説明力は低下
・米株・米ドル円の影響度が下がり、ユーロ/円が上昇した点が注目
多変量解析による影響度推計:
S&P500 ±1% → 日経平均±0.47%
米ドル/円 ±1% → 日経平均±0.20%
ユーロ/円 ±1% → 日経平均±0.41%
3.トランプ後はユーロ円に注目、分散投資なら金
・2025年1月のトランプ政権成立で構造変化?S&P500、米ドル/円、ユーロ/円すべて相関低下
・米ドル円と日経平均に統計的に有意な関係確認できず!
・ユーロ/円相場の影響が引き続き大きい
多変量解析による影響度推計:
S&P500 ±1% → 日経平均±0.23%
ユーロ/円±1% → 日経平均±0.44%
なお、全期間にわたってドル建金価格は日経平均とともに大きく上昇しているにもかかわらず、相関はなく有意な関係も認められませんでした。これは、日本株保有者にとって純金投資が分散投資として極めて有効であることを示唆しています。
■サナエノミクスでも日本株の米株・米ドル円離れは継続か?
日経平均への米株・米ドル円相場の影響が下がり、ユーロ円相場の影響度が相対的に高まっている原因としては以下が考えられます。
・米ドル・円の他通貨に対する連れ安(米国金利低下でも、日本の放漫財政懸念で米ドル円相場は円高進展せず)
・日本株がまだ「割安」(S&P500予想PER22~23倍、日経平均19倍)
・トランプ政権の施策を嫌気し、米ドル・米株エクスポージャーを減らしたい資金が日本株にも流入
・日本企業の輸出先多角化の動き(ユーロ圏との取引増加)
・今後の防衛装備品輸入増による実需の円売り・米ドル買い予測
これらの状況は、サナエノミクスでも対米配慮やインフレ懸念から円安政策に限界があると考えるなら、少なくともトランプ政権の間は大きな変化はないと考えられます。その結果、米ドル/円相場や米国株の動向に関わらず、海外マネーに日本株が押し上げられる流れは続く可能性が高いでしょう。また、米ドル/円よりもユーロ/円相場の変動に注目が必要となり、ユーロ/円相場が大きく動きそうな場合は、先物やCFDを含め日経平均や日本株のポジションを先んじて調整することが効果的と考えられます。
図表9 日経平均採用銘柄の値上がり率上位(25/3/31~25/9/30)

図表10 相関と影響度推定

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