アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~「2025年注目銘柄5選」の四半期決算アップデート~

投資情報部 榮 聡
2025/09/08
先週の米国株式市場は、一連の弱い雇用指標が金利引き下げ期待や長期金利の低下につながって相場を押し上げたほか、裁判の結果を受けてアルファベット株が大幅に上昇、また、9/5(金)はブロードコムの決算発表を受けて序盤に史上最高値を更新しました。今週の株価材料として、8月物価指標、アップルの新製品発表、クラーナ社の新規上場などが注目されます。
今回は本年1/6(月)の本レポートで取り上げた「2025年の注目銘柄5選」、エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、アマゾン ドットコム(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、イーライ リリィ(LLY)について、四半期決算と株価動向を振り返ります。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

一連の弱い雇用指標が金利引き下げ期待や長期金利の低下につながり、相場を押し上げました。9/5(金)はブロードコムの決算発表を受けて序盤に史上最高値を更新しましたが、その後には利益確定売りに押されました。依然として堅調な上昇基調が続いている印象を受けます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は8/28(木)終値~9/5(金)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
コミュニケーションサービス | 4.7% | 7.1% | 15.6% |
ヘルスケア | 1.1% | 5.8% | 2.6% |
生活必需品 | 1.0% | -1.8% | -1.4% |
一般消費財・サービス | 0.4% | 4.9% | 10.7% |
不動産 | 0.2% | 2.1% | 0.8% |
S&P500 | -0.3% | 1.4% | 8.0% |
素材 | -0.4% | 3.5% | 5.3% |
公益事業 | -1.4% | -3.5% | 2.8% |
情報技術 | -1.4% | -1.6% | 12.5% |
金融 | -1.5% | 2.3% | 3.5% |
資本財・サービス | -1.8% | -0.2% | 4.0% |
エネルギー | -3.0% | 2.1% | 4.7% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アルファベット | 11.0% |
ブロードコム | 8.5% |
ロウズ | 4.8% |
ウォルマート | 4.6% |
ユナイテッドヘルス・グループ | 4.3% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -10.3% |
テキサス・インスツルメンツ | -7.9% |
エヌビディア | -7.3% |
コノコフィリップス | -5.6% |
チャールズ・シュワブ | -5.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.3%、ナスダック指数は1.1%の上昇、ダウ平均は0.3%の下落でした。
一連の弱い雇用指標が金利引き下げ期待や長期金利の低下につながり、相場を押し上げました。また、アルファベット A(GOOGL)が反トラスト法の訴訟でウェブブラウザー「クローム」の売却を回避できたことが好感されて大幅に上昇、週後半にはブロードコム(AVGO)の好決算がAI関連銘柄を刺激しました。
経済指標では、7月求人件数、8月ADP雇用統計、8月雇用統計の非農業部門雇用者数がいずれも市場予想を下回って、雇用市場の鈍化を示しました。9月FOMCでの利下げ確率は100%まで上昇(0.25%ポイントの利下げが89%、0.50%ポイントの利下げが11%、9/5(金)時点)、10年国債利回りは先々週末の4.2%台から4.0%台まで低下して相場を支える要因になったと見られます。
カスタムAI半導体を製造するブロードコムは、来年度2026年10月期の売上は前年比50~60%増に達する可能性があるとして、2-4月期決算後の見通しを大きく引き上げました。AI半導体を開発しているパートナー企業から5-7月期に量産の発注を受けたことを明らかにしています。
業種指数では、アルファベットがけん引したコミュニケーションサービスの上昇が突出して高く、ユナイテッドヘルスが上昇したヘルスケア、ウォルマートが上昇した生活必需品なども上昇しました。
今週の米国株式市場
S&P500指数は米大手証券各社の年末目標株価のうち高い方の予想(6,500~6,600ポイントが多い)に近づいています。そういう意味では、高値警戒感が生じやすいでしょう。
ただし、AI関連銘柄に対する物色次第という面も強いとみられます。S&P500指数採用銘柄の時価総額上位8銘柄(マグニフィセント・セブン+ブロードコム)の比率は35%を超えていますが、いずれもテクノロジー株でAIに関連性のある銘柄です。
AIに対する市場のセンチメント次第で、年末目標株価を超えてくる可能性もありそうです。半面、AIデータセンターの投資減速などが意識されると、大きく調整する可能性もあります。
今週の株価材料として、8月物価指標、アップルの新製品発表、クラーナの新規上場などが注目されます。
9/10(水)の8月生産者物価指数は、総合指数が前年比+3.3%の予想(前月は同+3.3%)、コア指数が同+3.5%の予想(前月は同+3.7%)、9/11(木)の8月消費者物価指数は、総合指数が同+2.9%の予想(前月は同+2.7%)、コア指数が同+3.1%の予想(前月は同+3.1%)です。市場の利下げ予想に影響を与えるか注目されます。
アップル(AAPL)の新製品発表は9/9(火)の予定で、iPhone17、Apple Watchの新シリーズなどの発表が見込まれています。iPhone17では薄型の新モデルが含まれると期待されています。アップルの株価は米国内での大規模な投資を発表してトランプ関税を回避できる見通しとなって8月初旬から大幅な反発となっています。新製品の発表でさらに勢いを増すか注目されます。
スウェーデンのフィンテック大手でBNPL(Buy Now, Pay Later、後払い決済)事業を手掛けるクラーナ(KLAR)が9/10(水)に新規上場予定です。株式市場から長らく待ち望まれたIPO案件で、140億ドルのバリュエーションを目指しています。同業の米国企業アファーム ホールディングス(AFRM)の反応も注目されます。
経済指標では上記のほか、9/12(金)に米国の8月ミシガン大学消費者信頼感指数の速報値(前月の58.2から58.0に改善の予想)などが予定されています。
今週の5銘柄
今回は1/6(月)の当レポートでご紹介した「2025年の注目銘柄5選」について、6/2(月)の当レポートに続いて四半期決算の状況をフォローアップいたします。エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、アマゾン ドットコム(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、イーライ リリィ(LLY)の5銘柄です。
年初来のパフォーマンスは5銘柄平均で+10.0%と、S&P500指数の+10.2%をやや下回りました。ネットフリックスは、年前半の上昇を維持して堅調です。エヌビディアは市場のAIに対する見方が改善したことを受けて4月安値から大幅に戻りました。アマゾンはトランプ関税の影響がどのような形で出てくるか警戒があるようです。
イーライリリィは、肥満治療薬の市場拡大に対する期待は残っていますが、薬価引き下げの大統領令による影響が懸念されています。サービスナウの決算は好調が確認されたものの、市場の一部で唱えられている「AIがソフトウェアを駆逐するのでは」との懸念から免れていないようです。
図表3 2025年注目銘柄の株価推移

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (9/5) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | エヌビディア(NVDA) | 167.02ドル | 37.2 | 【アナリストは目標株価を引き上げ】 ・AI計算においてGPU(画像処理半導体)が適していることにいち早く気付き、また、GPUを汎用コンピュータとして使うためのソフトウェアへの投資を行ってきたことから、需要が急増するAIコンピュータ分野で支配的地位を確立しています。 ・5-7月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回り、8-10月期の売上ガイダンスも市場予想を上回りましたが、データセンター向け売上が市場予想を下回ったのがやや失望感を招きました。8-10月期売上ガイダンスには中国向け売上は算入しておらず、輸出が可能となれば20~50億ドルの上振れとなる可能性があります。総合的に好決算と判断され、アナリストは目標株価を引き上げています。 | |
買付 | サービスナウ(NOW) | 913.80ドル | 53.9 | 【AI関連売上が業績を押し上げ】 ・デジタル業務の自動化をサポートする企業で、業務内容が人工知能(AI)との親和性が高いと考えられます。会社は業績好調について、AI関連製品を契約する顧客が増加し、こうした傾向が今後も継続すると予想しているとコメントしています。 ・4-6月期決算では業績が堅調に推移していることが確認され、2025年12月期のサブスクリプション収入ガイダンスを前年比20%増の127億8000万~128億ドル程度へ引き上げました。ただし、企業向けソフトウェアは、新興AI企業との競合が懸念されて株価は冴えません。同社のソフトウェアは顧客向けにカスタマイズされるとみられ、競合の程度は限定的と考えられますが、市場では懸念があるようです。 | |
買付 | アマゾン ドットコム(AMZN) | 232.33ドル | 28.0 | 【目先は関税の影響に警戒】 ・ネット通販、クラウドサービス、広告事業とも、スピード、利便性、バリューに訴求する戦略によって、市場シェアの拡大とともに利益率の改善が期待されます。AWSの利益率はAIへの投資によって上下する可能性はありますが、中期的な拡大トレンドは変わらないと考えられます。 ・4-6月期決算は好調でしたが、7-9月期の営業利益ガイダンスが市場予想を下回って、決算発表後に株価は下落しました。足もとでは株価は回復基調ですが、市場には関税の影響が今後どのような形で出るか、また、AI投資による利益率圧迫には警戒が広がっているとみられます。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 1,243.82ドル | 46.8 | 【好調持続】 ・4-6月期の売上は前年同期比16%増、EPSは同47%増と好調な業績が維持されました。7-9月期の売上ガイダンスは、加入者数の増加、価格改定の効果、広告収入の増加を背景に前年同期比17%増と加速する見通しです。通期の売上と営業利益率のガイダンスが上方修正されました。 ・下半期には「ストレンジャーシングス」「ウェンズデー」など人気シリーズの投入が見込まれており、ライブイベントへの展開にも注目が集まっています。決算発表後に株価は下落しましたが、年初来大きく上昇していたため利食い売りが優勢になったとみられます。好調なファンダメンタルズを受けて見直し買いが期待できると考えられます。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 727.21ドル | 32.0 | 【肥満治療薬拡大で2025年も高成長へ】 ・株価はトランプ大統領が5/12(月)に発表した国内医薬品価格の引き下げを命じる大統領令への警戒から5月初めから下落しており、直近の相場回復局面でも戻りは鈍くなっています。当面買われにくい状況は続きそうです。 ・4-6月期決算は糖尿病治療薬「マンジャロ」、肥満治療薬「ゼップバウンド」への旺盛な需要が継続して市場予想を上回り、2025年12月期の業績見通しが引き上げられました。注目を集めている経⼝型肥満治療薬「オルフォルグリプロン」が後期臨床試験で10.5%の体重減少と血糖値の低下を実現したことが8/26(火)に発表され、年内に承認申請の見通しです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2026年1月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
8(月) | ・NY連銀1年インフレ期待(8月) ・米消費者信用残高(7月) |
|
9(火) | ・日本工作機械受注(8月) ・米NFIB中小企業楽観指数(8月) ・米3年国債入札 |
・アップル新製品発表会 オラクル、シノプシス |
10(水) | ・米生産者物価指数(8月) ・米10年国債入札 |
|
11(木) | ・ECB主要政策金利 ・米消費者物価指数(8月) ・米新規失業保険申請件数(9月6日に終わる週) ・米家計純資産変化(4-6月期) ・米30年国債入札 |
アドビ |
12(金) | ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(9月、速報値) | |
15(月) | ・米NY連銀製造業景気指数(9月) | |
16(火) | ・米小売売上高(8月) ・米鉱工業生産(8月) ・米NAHB住宅市場指数(9月) ・米20年国債入札 |
|
17(水) | ・日本機械受注(7月) ・米住宅着工・建設許可件数(8月) ・FOMC政策金利 |
ゼネラルミルズ |
18(木) | ・米新規失業保険申請件数(9月13日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(9月) |
フェデックス、ダーデンレストランツ、レナー |
19(金) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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