新興国株式の今後の見通しは?米金利低下の影響、注目の新興国株式ファンドを紹介!
投資情報部 川上雅人
2023/01/30
米金利低下で新興国株式が先進国株式よりも優位に
今回は分散投資の1つのアイデアとして新興国株式に注目します。
先進国株式インデックスファンドと新興国株式インデックスファンドを2017年末からの約5年間で比較すると、先進国株式優位の状況が長らく続いていました。しかし、昨年10月末からは新興国株式が緩やかに巻き返しています。図表1を見ると足元で、先進国優位を示すスプレッド(先進国株式のリターン-新興国株式のリターン)が縮小し、新興国株式が優位の状況となっています。これらのインデックスファンドは、株式の要因に加えて為替の要因も影響しています。
この状況を確認するために拡大したのが図表2です。図表2では、米国株式(S&P500)インデックスファンドも加えて示しています。先進国株式インデックスファンド(日本を除く)は、7割が米国株式です(2022年12月末)。2022年10月末以降は、先進国株式・米国株式との比較で新興国株式優位が確認できます。
新興国株式が優位となったきっかけは、米国の長期金利(10年国債利回り)の上昇が一服し、低下基調となっていることが考えられます(図表3)。これまでの米国の利上げとドル高進行時においては、新興国のドル建て債務が膨張することが懸念されました。しかし、米国の長期金利低下とドル高の一服により、こうした懸念が後退したことが1つの要因といえます。
昨年10月末以降では、米ドル(対円)の下落局面で主要新興国通貨は米ドルよりも対円での下げが小さくなっています。つまり、主要新興国通貨は対ドルでは上昇していることが確認できます(図表4)。
昨年10月に発表されたIMF(国際通貨基金)の経済成長率見通し(図表5)では、2023年の先進国は、米国やユーロ圏の景気低迷により前年比1.1%の低成長(成長率の鈍化)が見込まれるのに対して、新興国は3.7%の成長が予想されています。2023年の新興国は中国などの景気拡大により2022年から成長率見通しが減速しない点がポイントといえます。
新興国投資においてはゼロコロナ政策などによる中国の経済環境が懸念材料となっていました。こうした状況から中国株は昨年秋までは軟調に推移していましたが、①中国本土の新型コロナの感染がピークに達した兆しがみられたこと、②中国当局が事実上のゼロコロナ政策の終了を発表したこと、③中国当局がアリババ傘下のアント・グループによる資金調達計画を承認したこと、などから香港ハンセン指数は11月以降は堅調に推移しています。
他の主要新興国株式も総じて11月以降は堅調な値動きとなっています(図表6)。
(中国株の詳しい情報については、「中国株 ココがPOINT!」 をご参照ください。)
先進国株式との比較で長らく低迷していた新興国株式は、株価収益率(PER)で見ても相対的に割安な国が多く、2023年は見直される局面と考えます。加えて、インデックスファンドで見ても新興国株式は先進国株式や米国株式と比べて、直近1年のリスク(標準偏差)が低下しており、運用効率の観点からも新興国株式を組入れるのが有効といえます。実際にラップ型ファンドでも足元で新興国株式の組入れを増やす動きがみられます。
2023年の分散投資においては、新興国株式のウエイトを高めるのが有効と判断します。
図表1 先進国株式ファンドと新興国株式ファンドの比較
(2017/12/29~2023/1/26 2017/12/29=100)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成
図表2 先進国株式ファンド・米国株式ファンド・新興国株式ファンドの比較
(2022/10/31~2023/1/26 2022/10/31=100)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成
図表3 米国10年国債利回りの推移 (2021年12月末~2023/1/26)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成
図表4 主要新興国通貨と米ドル(対円レート)の比較
(2022/10/31~2023/1/26 2022/10/31=100)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成
図表5 先進国と新興国の経済成長率見通し (実質GDP、年間変化率、%)
(出所)IMF(2022年10月)
図表6 新興国の株価指数の比較
(2021年12月末~2023/1/26 2021年末=100)
※南アフリカはFTSE/JSE全株、ブラジルはボベスパ、メキシコはS&P/BMV IPC、インドはSENSEX、香港はハンセン、台湾は加権(休業日のため直近値は1/17まで)、米国はS&P500
※QUICKデータをもとにSBI証券作成
注目の新興国株式ファンドは?
新興国株式ファンドでは、高い経済成長が期待できるインドの株式ファンドなどが魅力といえますが、ここでは複数の新興国に幅広く分散投資されたファンドを取り上げます。
複数の新興国投資をカバーできるファンド分類の「国際株式」・「エマージング」で、レーティング4つ星以上の1年リターン上位ファンドで信託期間も参考にアクティブファンドは1本、インデックスファンドは2本を注目ファンドとしました(図表7)。
アクティブファンドのビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)は、新興国の小型株式に投資を行うファンドです。インド、台湾、韓国、香港、南アフリカが上位国となっています。
インデックスファンド1位のiFree 新興国株式インデックスはFTSE RAFIエマージング インデックス(円換算)をベンチマークとしています。同インデックスはFTSE社による基準をクリアーした新興国の上場株式の中から、 ファンダメンタル指標に着目し、リサーチ・アフィリエイツ社独自の構成手法により、銘柄の選定およびウェイト付けを行なう指数です。ファンドは中国、ブラジル、インド、台湾、タイが上位国となっています(2022年12月末)。
インデックスファンド2位のSBI・新興国株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(新興国株式))はFTSEエマージング・インデックス(円換算)をベンチマークとしています。同インデックスは全世界の新興国市場の大型株・中型株のパフォーマンスを表します。ファンドは中国、インド、台湾、ブラジル、サウジアラビアが上位国となっています。
インデックスファンドでは時価総額加重の指数がベンチマークとなっているSBI・新興国株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(新興国株式))がバランス良く分散投資されたファンドであると考えます。
なお、新興国株式のインデックスファンドではeMAXIS Slim 新興国株式インデックスが残高上位ですが、同ファンドはMSCI エマージング・マーケット・インデックス(円換算)をベンチマークとしていることから、上記のファンドとはリターンが異なります。
図表7 注目の新興国株式ファンド一覧
分類 | ファンド名 | 6ヵ月リターン | 1年リターン | 3年リターン (年率) |
アクティブ | ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型) | 2.16% | 3.57% | 13.87% |
インデックス | iFree 新興国株式インデックス | -3.41% | -0.45% | 3.36% |
インデックス | SBI・新興国株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(新興国株式)) | -6.83% | -3.21% | 4.14% |
インデックス(参考) | eMAXIS Slim 新興国株式インデックス | -7.03% | -7.05% | 3.21% |
※ 注目ファンドを1年リターン順に表示
※ データはSBI証券ホームページより抜粋(2022年12月末基準)
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