SBI証券

会ってみた!
10社ファンドマネージャーに
独占インタビュー!INTERVIEW

創業以来変わらぬ投資哲学
徹底したボトムアップ・リサーチ

藤村 忠弘氏
紹介ファンド「スパークス・M&S・ジャパン・ファンド (愛称:華咲く中小型)」
スパークス・アセット・マネジメント株式会社取締役 CIO シニア・ファンド・マネージャー 運用調査本部管掌

Q. ご出身は?

千葉県千葉市です。高校まで千葉に住んでいました。

Q. 好きな食べ物はなんでしょうか?

タイ料理やベトナム料理など、エスニック料理が好きです。
社会人になって、初めて3ヶ月程サンフランシスコ近くのバークレーに滞在したときに、当時日本食は高くて食べられなかったんですよね。ご飯が食べたくて仕方なかったので、中華料理やタイ料理、インド料理を食べる中、一番しつこくなくて食べやすいのがタイ料理でした。今でも仕事でアジアを訪れる際はエスニック料理をよく食べに行きます。

Q. こどもの頃の夢はなんでしたか?

小学生のときは学校の先生になりたいと思っていました。
特に具体的に何が、という訳でもなかったのですが、算数と社会が好きだったからだと思います。大学は筑波大学の社会工学(現:理工学部)という専攻で社会と数学の中間のようなところで勉強をしていました。ですので、小さい頃から好きだった算数と社会は活かされていて、今もどちらかというと、数字も社会も見るので、そういった意味では先生じゃないですけど、なんとなく好きなものがやれているなと思っていますね。

Q. 座右の銘を教えてください

SPARXグループの原点「ARTSの精神」

スパークスでは「ARTSの精神」というものがあって、弊社の阿部は「投資はアートだ」とよく言っているので、それとも引っ掛けて 芸術のアーツから4文字を取っているのかもしれません。

AがAGGRESSIVE、RがRESPONSIVE、TがTHOROUGH、SがSYMPATHETICからきています。

これは阿部が、私が入社する前からずっと言っている言葉で、いつも思い出しますね。
1つ1つ言葉の意味を考えると結構難しいというか、バランスを取るのが、凄く難しいなと思います。

というのも、単に趣味で株をやるだけだったら自分で好きなようにやればいいんですけど、仕事をする上ではただ「AGGRESSIVE」に攻めるだけではだめなことって沢山あるんですよね。
その中で、「RESPONSIVE」というのは仕事をしているのであれば、お客さんや社会の動きなどに対して、ただ自分が「AGGRESSIVE」に自分の思い込んだことをやるだけじゃなくて、周りの変化にちゃんと反応しなくてはいけません。また、「THOROUGH」というのは、単に思いついたらやるだけじゃなく、徹底して調べて極めることを意味します。

「AGGRESSIVE」に行きたいけど、徹底して調べるとスピードは遅くなってしまいますし、あまりにも調べすぎると動きにくくなったり、それによって反応が遅れたりということもあるので、この仕事を長くやればやるほど、「AGGRESSIVE」「RESPONSIVE」「THOROUGH」というのはバランスを取るのが凄く難しいなと思いますね。

最後に「SYMPATHETIC」ですが、『「SYMPATHETIC」に行動しなさい』という運用会社は世界にあまりないと海外の投資家からも言われたことがありますが、「SYMPATHETIC」を自分達の行動規範としています。
もとは、阿部がウォールストーリートで仕事をし始めて、日本人1人孤軍奮闘し、外資系企業特有の周りを蹴落としてでも戦わないといけないという状況下で、日本人の良さというのは「SYMPATHETIC」を持って、皆で束になって戦うことでしか勝てないんじゃないかと感じ、仕事において「SYMPATHETIC」を持つことが1つの強みになると言い始めたことに由来していると聞いたことがあります。

この仕事を30年近くやっていて思うのは、投信において「SYMPATHETIC」って凄く大事なことだなと思うんです。私達の仕事はマ-ケットや株がどう動くかということなんですが、それはその先にある企業がどう動くか、企業のひと達がどう考えるか、消費者や社会のひと達がこういう商品を出したらどう動くかなど、相手の気持ちが分からないといくら自分が色んなことを調べても、世の中のひとの気持ちが分からないと一人よがりになってしまうんですよね。気持ちを協調するって言う意味ではそういう気持ちを持っているひとじゃないと、長くこういう株の仕事や企業分析をする仕事はできないんじゃないかなと凄く思っていて、そういう意味では「ARTSの精神」という中の、最後の「SYMPATHETIC」とは長年やればやるほどすごく大事なことだなと改めて感じるようになっています。

Q.1週間休みがあったら何をしますか?

僕の今の最大の悩みは「この仕事がなくなったら何をするんだろうか」ということです。
スポーツや釣り、ゴルフとか結構皆色んな趣味があるじゃないですか。
子供が小さい時は子供と遊ぶのが一番楽しかったんですが、子供が大きくなった今、一週間休みがあったら何をするといったらたぶん何もしないでぼーっとしていると思います。ただ、特別1週間休みが欲しいともあまり思わないんですよね。
1日、2日休みたいなとは思う時もありますが、続けて休むと寂しというか、マーケットに触れていることが嫌いじゃないんですよね。たぶん1週間あったらどっかふっと気晴らしにどっか行きたいなっていうのはあるんですけど、あんまり特別な趣味がないっていうのが悩みです。

Q. 運用しているファンドやその運用方針の紹介をお願いします。

企業1つ1つを見極めて、良い会社に投資する

私はずっと小型株の運用をしていて、「華咲く中小型」については、今は別のファンドマネージャーが運用していますが、スタート時に私も企画をしていたことがあります。ボトムアップで1社1社いい銘柄を選んで投資するファンドですので、当社の他のファンドと同じようにアクティブ専門の自分達の調査で、小型株ファンドの中では少ない銘柄数に集中したポートフォリオで、あまり世界のトレンドがどう動くといったテーマとは関係なく、企業を1つ1つをみて、良い会社に投資しましょうというのが基本的な方針です。

このファンドを担当している者とも毎日のように話しをしているんですが、小型株は儲かるけど、危険だという印象があると思うんですよね。儲かる可能性もあるけど、タイミングを失敗すると損するし、ハイリスクハイリターンだから小型株はあまり投資をしたくないっていう気持ちの投資家が多いのではないかと思います。腕に自身がある個人投資家は、小型の方が面白いっていう人も多いと思うんですけども、平均するとやっぱり小型株って怖いっていう印象があると思うんです。

小型株の運用をずっとやっていて思うことは、小型株って実はきちんと調べてきちんと投資すれば大型株よりもよっぽど安全であって、それでいて高いリターンが稼げる投資対象であるということです。そういう意味ではこのファンドはそれを実現するためのものであるということで、何倍になりますとかそういうものじゃないんですが、インデックスや大型株のファンドよりも長い目で見ていたら、「あ!儲かってたね」っていうような、小型株で安心できる投資対象になってほしいというファンドとして運用しています。

去年は比較的良い成績だったということで表彰されましたが、一番になることというよりは長期でみていつもいいファンドであることをめざしています。
ファンドのパフォーマンスがいいときにお客さんが投資をしてくれて、その次の年悪くなると、結局平均して買ってる投資家さんが損してることになっちゃうじゃないですか。だから、いつもいい成績でそんなに上がったり下がったりせずに、このファンドを持ってくれるお客さんや投資家がハッピーになってくれるのが、やっぱりこの仕事をしていて一番嬉しいことなので、それを実現するために「比較的安定して成績がだせるファンドにしたい」というのが一番の目標でもあります。

Q. 他のファンドマネージャー(または運用会社)に「ここは負けない!」というアピールポイントを教えてください。

厳しい環境の中で培われた調査経験

色々な会社の企業調査の人達が、「何百社、何百回調査しています」などと言っていますが、それと同じく私もスパークスにきてから20年近く毎年毎年ずっと調査を続けてきていますが、本当にきちんと調査することって結構大変なことなんですよね。説明会をハシゴして5社6社行くことは簡単ですが、1つ1つ準備をして、調査をするには、僕の経験からすると年間400社調査するのは本当に大変なんです。

特に大きな会社と違って、スパークスはアナリストが沢山いるわけではありません。大きい会社での調査体制は、ファンドマネージャーが2、3人に、アナリストも含めて取材に行き、順番に質問をすることがあるんです。ただ、スパークスでは1人で行くことがほとんどなんです。そうすると、自分で話を進めながら沈黙にならないように雰囲気を保たなければなりません。経営トップと1対1で会話することも結構あります。

時にはIRを1度もやったことがない会社に訪問し、役員が8人全員出てきて1人で取材をしたこともあります。それはちょっと極端な話ですが、スパークスのファンドマネージャーやアナリストはこうした経験を積んでいるんです。また、相手がどういう質問をしてくるかに対して突っ込んでいくということをしないと、本当に重要な情報や考え方は分からないですよね。

今日インタービュー前に過去に訪問した企業数を数えてきたんですが、何度も訪問している会社は1として集計しても、1950社を訪問していました。
そういう意味ではこれだけの会社を調査した人はあまりいないんじゃないかなと思っています。もちろん、潰れてしまった会社も結構あります。説明会に行っただけという会社もありますが、少なくともそれだけの会社を一人で調査したというのは他の会社じゃそこまでちゃんとしていないだろうと自信をもっていえるし、スパークスのアナリストたちもそういう厳しい環境の中でやっています。また、30年この仕事をずっとやっている人も少なくなっていることからも調査経験としては他に負けないのではないかと思っています。

私達のような会社ですと、本当に他の会社が行ったことのないような会社や、IRを経験していないような会社にも行きますのでそういった中身の濃さも含めて、数もちゃんとこなしているぞというのが強みだと思っています。

Q. 一目置いている経営者の方はいらっしゃいますか?

有名な経営者、尊敬する経営者は沢山いますが、最近のポジショントーク的な感じで一人紹介すると、銘柄コード9514のエフオンというバイオマス発電を運営している会社の島﨑さんという社長です。公開当初はこの企業は評価していませんでしたが、業績が厳しくなり経営者が一新され、まったくこの業界の経験のない島﨑さんが社長に就任してからは困難を乗り越え、社員との信頼関係も厚く、現場で活躍する島﨑さんの姿をたびたび見て久しぶりに凄い社長だなと思っています。

様々なエネルギー問題がある中で、バイオマス発電は色々な会社が計画していますが、材料の木材チップの不足による採算が取れない発電所も沢山ありますし、運営の長い経験のある企業は日本には少ない状況です。その中でエフオンは苦労をしながらノウハウを蓄積、自分達で木材を集めてくるなど、他のバイオマス発電運営企業とは異なり、しっかりした会社だと思っています。

今後、日本においてエネルギーや森林問題など大きな課題であり、同社が成功してくれることが、このビジネスの発展にもつながると思われ、日本全体にとっても良いことだと考えています。

Q. 今後チャレンジしてみたいことはありますか?

同じ運用方針を持った後継者育成

ファンドは20年、30年と長期で保有し、リタイアしたときのことを考えて運用しましょうと言っているのに、ファンドマネージャーが急にいなくなったり、年をとって病気になってやめてしまったりした場合、そのファンドを保有している投資家は困ってしまいますよね。

ファンドの在り方としてはずっと同じファンドに投資することで、自分が欲しいときに解約したり、資金化したりすればいいと思います。そういう意味では僕はずっと運用したいと思っていますが、永久に運用を続けられるわけではないので、スパークスの小型株や厳選投資を評価してくれて、買ってくれる人たちにとって、ずっとスパークスを持って、その人が本当に必要なときに売却して、しっかりとしたリターンでお返しするため、1人のファンドマネージャーが運用を行っている会社ではなく、同じことができる次の世代、次の次の世代といった後継者がいるということが私は投資信託を選ぶ意味では結構大事なことだと思います。

理想としては同じ方針で運用してくれているファンドに長く預け続けることが一番いいと思うので、僕と同じことができるというよりも、僕よりも優れた運用ができる人を次の次ぐらいまでは育てられるかなとは思っているのですが、そういう運用者をスパークスの中に作っていく、もしくはその次の次の次を作れるような雰囲気を作っていくということがチャレンジであり、やらなきゃいけないことだと思っています。

Q. 最後に一言お願いします。

小型株のパフォーマンスは昨年の後半から全体的に不安定な状況となっているため、心配されている方も多いと思いますが、投資信託の運用とは株を短期で売買するようなものではなく、長期で保有するものだと思うので、頑張って運用いたしますので長期で保有してくださいということと、是非このインタビューを読んで、当社の商品を購入してくれる方や、投資してくださる方がいればいいなと思います。

インタビューを終えて

藤村さんが投資家のお客さまや会社を第一に考えていらっしゃることが強く伝わるインタビューでした。
また、“企業調査経験においては他の会社の方々には負けない”と仰っていましたが、数あるファンドマネージャーの中でも長い運用経験と確かな知識があってからこそのご発言だと感じ、敬服させられました。
本ページにてご紹介させていただいたスパークス・グループの行動規範でもある「ARTSの精神」。
皆さまはどう感じられましたか?「SYMPATHETIC」であることの必要性についても触れていらっしゃいましたが、“思いやり”とは我々の生活でも大事なことですよね。とりわけ、同社で働く方々は「SYMPATHETIC」であることに加えて、「情熱的」な方が多くいらっしゃると常々感じております。
2019年3月22日に、東京証券取引所市場第一部へ市場変更されたスパークス・グループは、1989年に投資顧問業を開始し今年創業30周年を迎えます。
勢いに乗る同社に今後も要注目です!

SBI証券 長谷川