国内株式「ニッチ」な銘柄の底値を拾うことも有効な投資戦略

※2020年1月時点の情報です。

2019年の新興市場を振り返る

2019年の新興市場を一言で語るとJASDAQの好調、マザーズの不振です。特に年後半はJASDAQがほぼ一本調子で上昇し、年初来高値を連続更新しているのに対し、マザーズは2月の高値から10%程度下落したままです。なおJASDAQについては、日経平均とほぼ同程度のパフォーマンスですから、マザーズの1人負けともいえるかもしれません。
マザーズ指数は時価総額の大きい銘柄のパフォーマンスに左右されやすい特性がありますが、そーせいグループ(4565)、メルカリ(4385)、サンバイオ(4592)などの時価総額上位銘柄が軒並み不振でした。これらは、いずれも赤字決算ながら将来への期待感から高いバリュエーションが形成されていた共通点があります。
逆にJASDAQ平均は、大型銘柄のワークマン(7564)、日本マクドナルド(2702)、ハーモニック・ドライブ(6324)、ニューフレアテクノロジー(6256)などの株価好調が指数を牽引しました。これらの銘柄はきちんと利益を計上しており、しかも業績好調や回復期待の銘柄群です。
景気後退期に入ったため、投資家心理がリスクオフ(回避)となりディフェンシブな銘柄選好となったこと、加えてマザーズの個別銘柄に悪材料が相次いだことなどが背景と思われます。成長途上の段階にある新興株の投資タイミングとして、最終的には企業業績が重要だということを肝に銘じておきたい1年となりました。

2020年の新興市場の展望

2020年は世界的な低金利環境のもと、後半になれば景気回復の道筋が見えてくるものと想定します。年後半には企業業績も底入れするのではないでしょうか。このため投資家心理はリスクオンとなり、新興株市場への投資も活発化するものと期待されます。既に2019年末からは金融相場的色彩が見られます。
したがって新興株市場については、むしろ日経平均よりも良好なパフォーマンスが期待できる可能性があります。昨年の当欄では新興市場について、「PERの上昇は期待できず、EPSの増加が確実に期待できる個別銘柄に投資対象を絞るべし」と述べました。2020年については、もちろんEPSの増加期待はさることながら、PERの上昇も期待できそうなテーマ株投資がワークするのではないかと考えています。また2019年はIPO銘柄に関しては、あまり良いリターンは取れませんでした。ただし、選別は必要ですが「オンリーワン」、「ニッチ」な銘柄に関しては、積極的に底値を拾うことも有効な投資戦略ではないかと思います。

2020年の国内株式の注目のテーマ、キーワード

「5G」、「AI」は引き続き重要なテーマになると思われますが、テーマとしてはいささか食傷気味かもしれません。オリンピックと絡めて「eスポーツ」というジャンルもありますが、版権問題やそもそもスポーツなのか、という疑問もあります。
筆者は「国土強靭化(老朽インフラの整備を含む)」に注目しています。東京五輪のインフラは殆ど完成済みですが、今後は近年相次いでいる自然災害(地震、洪水、台風)への対応、さらには老朽化している道路、橋梁などへの投資が活発化するのではないでしょうか。また2020年には東京都知事選が行われますが、小池現知事の公約になっている電線の地中化にも期待しています。
建設業者が直接の受益者となりますが、新興株の中にも、コンサルや工事に使われる器具・部材、測量などの提供業者が多数存在しており、注目されるのではないでしょうか。

長谷川 稔
SBI証券 投資情報部 シニアアナリスト

福島県福島市出身。1979年北海道大学経済学部卒業後、大和証券調査部に入社し証券アナリスト業務を開始。91年以降はSGウォーバーグ、BZW、ドイチェなどの外資系投資銀行で鉄鋼・非鉄など素材産業を中心に調査・分析を行ってきた。99年からはバイサイドに転じ、三井住友アセットマネジメントで素材産業や中小型株のアナリストとして年金基金および投資信託の運用に直接携わってきた。2017年3月より現職。幅広いセクター経験、機関投資家としての運用実績を生かして、有望個別銘柄の発掘に注力。

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