銀行・金融2020年は企業間決済の効率化に注目

2019年の銀行・金融業界を振り返る

2019年の銀行株は2018年末の急落からいったんは上昇したものの、米国国債と日本国債の利回り低下、日銀の金融緩和深掘り懸念、米中間の緊張などにより大きく下落した。8月に底をつけた後に、銀行株価は回復した。
銀行の収益は、国内においては個人向け投信販売の不振で伸び悩み、一方で、法人向けはM&A、シンジケートローンなど好調を維持した。海外部門はコストの削減が進まず、ROEは国内法人部門と同程度。個人決済におけるキャッシュレス化は進んできたが、収益化の道筋はまだ不透明である。大手行も地銀も支店網の見直し、人員削減を進めている銀行が多い。
地銀では十八銀行がふくおかFGの傘下に入った。また関西みらいFG傘下の関西アーバン銀行と近畿大阪銀行は関西みらい銀行に統合された。千葉銀行と横浜銀行の業務提携、福井県、青森県の地銀の提携の検討など、再編ではないが、協働しようとする動きが見られた。SBIグループによる、島根銀行と福島銀行への出資、山陰合同銀行の証券子会社解散と野村證券への口座移管など、銀行業界以外との再編・効率化の動きもあった。

2020年の銀行・金融業界の展望

2020年においても日本銀行の金融政策が金利を上げる方向には動かないだろう。これは国内の資金利益は低迷することを意味する。与信費用は徐々に上昇しつつある。戻入れが少なくなってきたためだが、今後もそのトレンドは変わらないだろう。
銀行は、収益の成長の柱になるものを探そうとしているが、見つけるのは容易ではない。そのため、経費の削減のための業務量の削減、支店網の見直し、人員削減などが引き続き大きな課題となるだろう。
他業種との連携、提携は様々な形で進んでいくと思われる。他業種が銀行の分野、特に決済分野へはさらに進出してくるだろう。銀行としてはこの分野で守りだけではなく、反撃するためのツールや仕組みの開発が必要になる。
2019年にふくおかFGが発表した、モバイル専業銀行(デジタルネイティブバンク)はまだ構想段階に過ぎないが、個人向け銀行業のあり方を変えるものになるのではないだろうか。

2020年の銀行・金融業界の注目のテーマ、キーワード

2020年の銀行業界の注目テーマはまず、「サブスクリプション」であろう。口座管理手数料の徴収が難しいのは、手数料を払っても顧客が得られるサービスが変わらないことも一つの要因である。個人でも法人でも、顧客が求めるサービス・商品を提供することで、サブスクリプションによる手数料の浸透を図る銀行が出始めるのではないかと当社では考える。
二つ目は「BtoB決済」である。個人向け決済(BtoC)のキャッシュレス化は進んでいくだろうが、2020年には企業間決済の効率化に注目が集まるだろう。BtoCの市場は300兆円であるが、BtoBは1,100兆円にものぼり、EC化比率は30%に過ぎない。この市場は銀行にとって取組むべき分野となるだろう。
金融が関連するイベントとしては、消費税増税に伴うポイント還元制度の終了(6月30日)、東京オリンピック・パラリンピックの開催(7月‐9月)、アメリカの大統領選挙(11月)、などが挙げられる。

鮫島 豊喜
SBI証券 企業調査部(銀行業界、金融担当 シニアアナリスト)

1983年にシティバンクN.A.東京支店に入行。1995年にSanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しアナリストとしてのキャリアをバイサイドからスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。
アナリストとして、20年以上一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式の立場から見てきた。マクロに連動する業界ではあるが各社のファンダメンタルズ分析も重視したリサーチを行う。メガバンクから地方銀行までをカバー。米国コロンビア大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。

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