エレクトロニクス「新しい波」に乗れるかがカギを握る

2019年のエレクトロニクス業界を振り返る

2019年は、米中貿易摩擦の影響に振り回された1年でした。最も象徴的な出来事は、1月17日に日本電産が19/3期予想を増収・営業増益計画から一転、減収・営業減益予想に下方修正したことです。同社は下方修正の理由として、米中貿易摩擦の激化により、中国のみならず世界全体に深刻な影響を及ぼし、客先での需要減や在庫調整が進行していることを挙げていました。その後、多くの電機メーカーが同様な理由により、相次いで19/3期業績予想の下方修正を行い、20/3期に入っても半導体・電子部品、半導体設備投資・FA関連など、幅広い領域でマイナス影響が続きました。一方、明るい話題としては、年後半にかけて在庫調整の進展を示唆するデータが増えてきたこと、次世代通信規格「5G」や次世代EUV(Extreme Ultra-Violet : 極端紫外線)露光技術などに関連する需要が立ち上がってきたこと、中国での基礎研究分野向けのハイエンド分析機器の堅調な需要が継続していたこと、などが挙げられます。

2020年のエレクトロニクス業界の展望

2020年は、世界の自動車販売や工場の自動化投資(FA)の回復が遅れることがダウンサイドリスクですが、データセンタ、5G関連製品(端末、基地局、テスターなど)の需要拡大が期待できることや、サプライチェーンにおける在庫調整が進展しているため、半導体・電子部品市場は19年対比では回復が見込まれます。世界の半導体市場(金額ベース)は、2019年が前年比約13%減に対し、2020年は同+7%増に回復をSBI証券では予想しています。半導体設備投資も、20年はメモリーメーカーの投資再開に伴い回復が見込まれます。また、ロジック向けを中心に、EUV関連投資の拡大が期待されます。

2020年のエレクトロニクス業界の注目のテーマ、キーワード

注目テーマとしては、スマホの高機能化(5G、カメラ多眼化、折り畳み可能ディスプレイ)、自動車の自動運転やエレクトリフィケーション(電動化)への取り組み加速、次世代ゲーム(プレイステーション5)の登場、薄くて軽い「モダンPC」の普及増、AIやIoTの社会実装の進展、ホームネットワーク(つながる家電)による「家のスマート化」の進展、などが挙げられます。米中貿易摩擦の影響が緩和されるかを予測することは困難ですが、こうした「新しい波」に乗れるかどうかが、電機メーカー各社の将来を見通すうえでのカギを握ると考えられます。

和泉 美治
SBI証券 企業調査部(エレクトロニクス、半導体・電子部品担当 シニアアナリスト)

1983年にエルコインターナショナル(現:京セラエルコ)に入社。1990年に英国バーミンガム大学にてMBAを取得。1991年よりUBS証券、JPモルガン証券の株式調査部で産業エレクトロニクス、民生エレクトロニクス、半導体・電子部品等の業界・企業分析に携わってきた。大型株に加え、アナリストカバレッジの少ない中小型の調査にも注力。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。2008年から2012年Institutional Investor誌アナリストランキング、日経ヴェリタスでも常に上位にランクイン。2018年4月より現職。

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