小売、レジャー・アミューズメント業界再編の動きが活発化する可能性も

2019年の小売、レジャー・アミューズメント業界を振り返る

小売業界では、QRコード決済などキャッシュレス、ポイントサービスが大きな話題となった1年だった。
しかし、皮肉にも神戸物産、ワークマンなど業績好調で株価が大幅に上昇した小売株は、どこもキャッシュレス決済に消極的でポイントサービスも導入していない企業ばかりだった。逆に、QRコード決済などキャッシュレスに積極的に取り組んだ企業は、セブン&アイ・ホールディングスのように不正利用で躓いたとか、カード決済手数料やポイント費用が重荷となり業績を悪化させる企業が多かった。
小売業の競争力の源泉は「商品力」と再認識させられる1年となった。

レジャー・アミューズメント業界では、インバウンドの増加などを背景に好調の続いていたホテル業界に変調の兆しが見えてきた。
一部地域におけるホテルの供給過剰による競合激化、日韓関係の悪化、台風19号被害などでADR(平均客室単価)が下落に転じるところが増えてきており、ホテル業界の転換点となった年と記憶されよう。

2020年の小売、レジャー・アミューズメント業界の展望

政府のキャッシュレス決済に対するポイント還元制度は、消費喚起には繋がらず、小売業界に混乱と競合激化をもたらした。ポイント還元制度が終了する7月以降は、消費が一段と冷え込む可能性が高く、ポイント還元制度を利用していた中小の小売店は窮地に追い込まれよう。消費低迷の深刻化に加え、免税売上高にも減速感がみられる。百貨店やGMS(総合スーパー)では閉店が加速、スーパーマーケット、ドラッグストアなどの業界では再編の動きが活発化する可能性もあろう。

レジャー・アミューズメント業界では、東京五輪の影響が色々な面で出てくることが予想される。東京五輪前後には警備の人員不足などの問題から、ライブなどのイベント開催に影響が出る可能性がある。一方で、ホテル業界は五輪期間中の大幅なRevPAR(販売可能客室当たりの客室売上=客室稼働率×平均客室単価)の上昇が見込まれよう。東京ディズニーランドの大規模再開発が2020年4月15日にグランドオープンする。料金改定にも注目が集まろう。

2020年のレジャー・アミューズメント業界の注目のテーマ、キーワード

レジャー・アミューズメントでは、2020年はダイナミック・プライシングがテーマ、キーワードとなろう。東京五輪のチケット販売は、競技や席により2,500円から300,000円まで幅広いレンジでの価格設定がなされた。チケット販売には1次抽選だけでも五百万人以上が応募、多くの日本人にダイナミック・プライシングを認知されるきっかけとなった。エイベックスは、浜崎あゆみのカウントダウンライブでダイナミック・プライシングを採用。20年4月にも予想される東京ディズニーリゾートのチケット料金改定においても、ダイナミック・プライシングが採用される可能性もある。スポーツ・ライブ・テーマパーク・ホテル・小売などでダイナミック・プライシングの採用が一気に広がる1年となろう。

田中 俊
SBI証券 企業調査部(小売、レジャー・アミューズメント業界担当 シニアアナリスト)

1988年に山種証券(現SMBCフレンド証券)入社、支店営業、投資情報部などを経て、山種調査センター(現SMBCフレンド調査センター)に出向。 以来、約20年に亘り、小売、レジャー・アミューズメント業界のアナリストとして、業界・企業分析に携わる。2016年12月より現職。トムソン・ロイター アナリスト・アワード・ジャパン2016にて、収益予想部門 ホテル・レストラン&レジャーで業種別1位。主力銘柄のカバーをしつつ、機動力を生かして、アナリストカバレッジの少ない地方銘柄、中小型銘柄の発掘にも注力。

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