米中貿易摩擦や中国の経済減速、および世界的な自動車・半導体産業の低迷により、2019年の化学メーカーの収益は悪化しました。特に、総合化学メーカーは、石油化学を中心に需要低迷や市況下落の影響を強く受けました。一方で、高シェア・ニッチ市場の製品比率が高い中堅化学メーカーの収益は相対的に堅調でした。業界の動きとしては、中堅化学メーカー2社が経営統合を発表したほか、大手化学メーカーが米国製薬企業を買収するなど、中期的な収益拡大に向けた取り組みが加速した1年になりました。

化学・合繊5G、環境負荷低減、再生医療に注目
2019年の化学・合繊業界を振り返る
2020年の化学・合繊業界の展望
2020年の化学・合繊業界ですが、石油化学においては、米国でのシェールガスベースのエチレン設備増強や中国の新増設により需給緩和が続く見通しです。石炭価格は低位安定が続くと予想されるため、自家発電所を持ちセメント生産を行っている化学メーカーは石炭コスト低下メリットを受けるとみています。電子材料は、半導体の回復や5Gの商用化によりシリコンウエハーを中心とした需要回復が期待されます。5G化では、中国での有機EL(OLED)スマホの需要拡大に伴うポリイミドワニスの出荷増も見込まれます。ライフサイエンスでは、がん検査チップや再生細胞などの開発進展を予想しています。化学業界では、2020年もM&Aによる事業統合や周辺事業領域の拡大などが見込まれます。年後半には、自動運転やAIといった分野に向けた材料開発も想定されるなか、スタートアップ企業への投資も拡大するとみています。
2020年の化学・合繊業界の注目のテーマ、キーワード
2020年の化学セクターの注目テーマは、「5G関連」・「環境負荷低減」・「再生医療」とみています。
「5G」対応スマホになると、1台当たりのシリコンウエハー面積が24%程度増加すると予想されるほか、半導体の放熱材料として窒化アルミニウムなどが採用される見通しです。半導体の微細化進展でEUVレジストの需要も本格化すると考えます。
2020年は東京オリンピック開催により、環境負荷低減が注目されると思われます。電気自動車(EV)導入の加速や、廃プラスチック回収・再利用など、サステナビリティに注目が集まると予想しています。EV向けリチウムイオン電池材料では、日本メーカーが高いシェアを有するセパレータの需要拡大が期待されます。プラスチックリサイクルや生分解性プラスチックの技術開発も進展すると考えます。
「再生医療」とは、幹細胞等を用いて、臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し、それらの臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復を目指す医療です。既存の医薬品では治療が難しいものや、治療法が確立されていない疾患に対して新たな治療法となる可能性があります。この分野では、細胞培養技術などで化学メーカーが注目されそうです。

澤砥 正美
SBI証券 企業調査部(化学・合繊業界担当 シニアアナリスト)
1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、5年間米国化学大手企業の日本法人であるデュポン・ジャパンにて、日本の化学大手企業との合弁事業の設立・運営および化学品の開発・マーケティングに従事。その後1990年から化学業界のアナリストに転じる。クレディ・リヨネ、BZW、HSBC、クレディ・スイスなどの外資系証券会社にて、27年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。クレディ・スイス証券では、化学業界20社および繊維業界3社の調査を担当したほか、公益社団法人 日本証券アナリスト協会 ディスクロージャー研究会における化学・合繊専門部会の部会長として化学・合繊業界のディスクロージャー評価の向上にも尽力。日経アナリストランキングやInstitutional Investorsランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経アナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。主力銘柄のカバーに加え、アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。最近では、リチウムイオン電池材料、有機EL材料、自動車軽量化素材およびライフサイエンス分野のリサーチにも注力している。
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