機械・ロボット米中貿易摩擦の動向が活況を左右する

2019年の機械・ロボット業界を振り返る

SBI機械、造船・プラントセクターが、19年3月に発行したベーシックレポート「ロボットへの期待と展望2019」の骨子の1つは、19年はロボット市場も米中貿易摩擦の影響他から調整が見込まれるものの、中期成長期待から注目が必要というものであった。日本ロボット工業会が1月に示した2019年の産業ロボットの受注額(会員+非会員)は1兆500億円・4%増YoYであったが、5月に同9,400億円・2.3%減に下方修正。一方19年1-9月、9ヵ月累計受注額は5,040億円・18.1%減YoY。四半期統計には非会員は含まれておらず、見通しとの乖離はこれを考慮する必要があるが、YoY減少率を見る限り、ロボット工業会の見通し以上に厳しい状況が続いている。なお四半期(3ヵ月)ベースでは、受注額は19年1-3月の1,560億円をボトムに、同4-6月1,775億円、7-9月1,705億円という推移。なお株価は堅調であり、上記レポート発行時を基準とすると、平均上昇率は25%超となっている(12月17日終値ベース)。

2020年の機械・ロボット業界の展望

産業用ロボット受注とアベノミクス以降で工作機械受注がマイナスの年の増減率を以下で比較してみる。
ロボット: 2013年+0.4%YoY、同15年+16.4%、16年 +5.2%
工作機械: 2013年 -7.9%YoY、同15年 -1.9%、16年-15.6%
同3年の産業用ロボットYoY伸び率-(マイナス)同工作機械の差は平均15.8ptと推計される。上記から、工作機械のYoYマイナスがゼロに近づけば、ロボットは+10%以上に回復する可能性があろう。また工作機械よりもロボットの方が早期に回復する公算が大きいと考えられる。産業用ロボット受注額について、2020年4-6月前後にYoYベースでの回復を予想するが、「米中貿易摩擦」の動向次第で前後にズレることになろう。
中国におけるロボットに対する需要の背景は、品質安定化と人手不足と考えられるが、現状同需要は潜在化しているとみられる。「米中貿易摩擦」緩和などにより、中国経済が落ち着きを取り戻した場合、潜在需要の顕在化により、ロボット業界も活況を取り戻す可能性があろう。

2020年の機械・ロボット業界の注目のテーマ、キーワード

2020年は「手術支援ロボット」に注目したい。同分野における世界トップ、米インテュイティブサージカル「ダ・ヴィンチ」に関する特許の多くが19年に期限切れになるとみられており、日本企業の参入、その後の動向に期待したい。
日本では、2012年以降の保険適用により、ロボット手術は安い値段で受けられるようになった。一方医療機関が得る診療報酬は、2つを除いて従来手術と同じであり、いわゆる「設備投資」につながり難い状況。2020年の診療改定にも注目したい。
IFR(国際ロボット連盟)では、メディカルロボットの市場規模(グローバル)は、2018年5,100台(+50%YoY)、2019年7,200台(同+39%)、2020-2022年累計19,700台(年平均+40%)と予測している(19年9月18日)。

諸田 利春
SBI証券 企業調査部(機械、ロボット担当 アナリスト)

1988年に新日本証券(現みずほ証券)入社、1992年新日本証券調査センターに出向以来、東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、ドイツ証券にて、約20年にわたり、機械、造船・プラントセクターのアナリスト業務に従事。準大手証券でアナリスト開始後、約3年でアナリストランキングにランクイン。以降約17年にわたり上位をキープ。最高順位は日経ランキングが機械3位、造船・プラント2位、Institutional Investor Plant Engineering & Shipbuilding 2位。その他Greenwich SurveyMachinery 5位、スターマイン 機械1位など。2005年には当時初の機械、造船・プラント両セクターでの日経top3入りを達成。
三菱UFJ証券以降は、特にロボット、FAなどメカトロニクス分野の調査に注力。欧ABB、独クカ、シーメンス、米ボーイング、キャタピラーなど海外競合メーカーへの取材、工場見学実績も多数あり。

ご注意事項

  • ・当社の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。
  • ・また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります。
  • ・各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスク情報につきましては、
  • ・SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ及び金融商品取引法に係る表示並びに契約締結前交付書面等の記載内容をご確認ください。