ビジネスソリューション採用・教育、地位の確立がテーマの年

2019年のビジネスソリューションを振り返る

2019年は、セクターの中心である主要インテグレーター群と中小型ITサービス群、各々特徴のある動きが見られました。
前者においては、過去数年間に亘り各社のPERが切り上がる傾向にありましたが、2018年末に相場全体が下がった後、四半期決算を経る毎にその切り上がり方に一服感が見受けられました。これは、ファンダメンタルズ自体は依然として良好なものの、機関投資家の保有銘柄の中でこれらのウェイトが高まってきた事、従前に比べ割高感が出てきた事などから、割安感のある他セクターに資金の流れがシフトしつつあるためとみています。

後者においては、2019年半ばに起きたグロース銘柄の急騰、急落を経た後の足元においてパフォーマンス格差が銘柄毎に顕著に表れています。金利見通しや日米貿易摩擦等、マクロ動向の変化に伴うグロース銘柄の乱高下は避けられないものの、そこで再び戻る銘柄とそうでない銘柄があるという事実がより鮮明になった1年だと感じています。

2020年のビジネスソリューションの展望

主要インテグレーター群は2019年以上にPER上昇に一服感が表れるでしょう。これまでのPER上昇要因は、「他セクターの相対的な弱さ」、「5G、IoT、自動運転等のキーワードへの過度な期待」、の二つだと思います。しかし近年の他セクターの割安感やグロースからバリューへの資金シフトは、PER上昇を妨げます。また期待値の高い各種事業はいずれも売上構成比が小さく全体業績に与える影響が限定的になり易いため、結果的に従前同様の成長率に留まるでしょう。この点もPER上昇を妨げる要因の一つと考えます。

一方、中小型ITサービス群は2019年以上に個別銘柄選定色が強まるとみています。2019年は赤字企業含め多様なビジネスモデルの企業が多数上場しました。2020年は彼らの業績推移及び株価動向を試金石に、成長の持続性、サービスの本質的付加価値、実現可能な収益性のライン、を見極める力が市場全体として高まり、結果的に中小型銘柄間のパフォーマンス格差が更に広がると思っています。

2020年のビジネスソリューションの注目のテーマ、キーワード

主要インテグレーター群のテーマは、「採用・教育」です。未だ収益の大半が受託開発である点からは人材採用が不可欠です。同時にビジネスモデルの変革も必須のため、多様なスキルを持った人材も必要です。但しIT業界全体としては人材不足であり採用環境は激しい状況のため、教育力を高める事も重要といえるでしょう。

中小型ITサービス群のテーマは、「地位の確立」です。短期的な利益を追求しない企業が多い昨今ですが、重要なのは赤字を掘ってまで何を獲得しているかです。その投資が将来の盤石な地位を確立するために必要な、事業規模、顧客基盤、製品・サービス開発への投資かどうかに注目すれば、足元のPERに惑わされない投資判断が可能だと考えています。

畑田 真
SBI証券 企業調査部(ビジネスソリューション担当 アナリスト)

国立名古屋工業大学を卒業後、2013年に東海東京証券に入社。
地方支店や基幹支店における個人営業、投資銀行部門における株式引受業務や債券引受業務を経験後、2015年10月より東海東京調査センターに出向しアナリスト業務に携わる。
半年間のアシスタント経験を経て、2016年4月よりビジネスソリューションセクターを新規に立ち上げ担当。2018年日経ヴェリタスでは初登場13位にランクイン。2018年11月より現職。
準大手証券でのセルサイドアナリスト経験を生かし、主力銘柄のみならず、アナリストカバレッジが少なく且つエッジの効いた中小型銘柄を発掘する事に注力。

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