化学・合繊注目テーマは、「5G関連」・「自動車電動化」・「再生医療」

2020年の化学・合繊業界を振り返る

化学業界は、新型コロナウイルスの影響が2020年前半に大きく出て、自動車向けを中心とした化学製品の販売数量減少により20年度上期の収益は低迷しました。 特に、総合化学メーカーは、石油化学製品を中心に需要低迷の影響を強く受けました。一方で、半導体関連製品の需要は好調に推移したほか、高シェア・ニッチ市場の製品比率が高い中堅化学メーカーの収益は相対的に堅調でした。業界の動きとしては、中堅化学メーカー2社の経営統合計画が中止になった一方で、11月には海外のシリコンウエハーメーカーの同業他社買収が発表されるなど、コロナ禍のなか事業戦略の見直しが行われた1年になりました。

2021年の化学・合繊業界の展望

2021年の化学・合繊業界ですが、石油化学においては、コロナ影響の一巡から販売数量の回復に加え、製品市況上昇により収益改善が期待されます。電子材料は、半導体の需要拡大や5Gの普及でシリコンウエハーを中心とした需要増が期待されます。また、中国での有機ELスマホの需要拡大に伴うポリイミドワニスや放熱材料の出荷増も見込まれます。ライフサイエンスでは、がん検査チップや再生細胞などの開発進展を予想しています。化学業界では、2021年もM&Aによる事業統合や周辺事業領域の拡大などが見込まれます。年後半には、自動運転やAIといった分野に向けた材料開発も想定されるなか、スタートアップ企業への投資も拡大するとみています。2021年は、グローバルニッチトップ企業の収益が相対的に堅調と思われます。

2021年の注目テーマは、「5G関連」・「自動車電動化」・「再生医療」

「5G」の普及で半導体の微細化が進み、高精度のシリコンウエハーやEUVレジストの需要が本格化すると考えます。また、2021年からは欧州のCO2規制強化により、電気自動車(EV)導入が加速する見通しです。EV向けリチウムイオン電池材料では、日本メーカーが高いシェアを有するセパレータやバインダーの需要拡大が期待されます。「再生医療」とは、幹細胞等を用いて、臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し、それらの臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復を目指す医療です。既存の医薬品では治療が難しいものや、治療法が確立されていない疾患に対して新たな治療法となる可能性があります。この分野では、細胞培養技術などで化学メーカーが注目されそうです。

澤砥 正美
SBI証券 企業調査部(化学・合繊業界担当 シニアアナリスト)

1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、5年間米国化学大手企業の日本法人であるデュポン・ジャパンにて、日本の化学大手企業との合弁事業の設立・運営および化学品の開発・マーケティングに従事。その後1990年から化学業界のアナリストに転じる。クレディ・リヨネ、BZW、HSBC、クレディ・スイスなどの外資系証券会社にて、27年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。クレディ・スイス証券では、化学業界20社および繊維業界3社の調査を担当したほか、公益社団法人 日本証券アナリスト協会 ディスクロージャー研究会における化学・合繊専門部会の部会長として化学・合繊業界のディスクロージャー評価の向上にも尽力。日経アナリストランキングやInstitutional Investorsランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経アナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。主力銘柄のカバーに加え、アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。最近では、リチウムイオン電池材料、有機EL材料、自動車軽量化素材およびライフサイエンス分野のリサーチにも注力している。

2021年セクター別予想

ご注意事項

  • ・当社の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスク情報につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ及び金融商品取引法に係る表示並びに契約締結前交付書面等の記載内容をご確認ください。
    金融商品取引法に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません