エレクトロニクス人の動きはスローでもデータの動きは加速、スーパーシティ構想でDXが進展

2020年のエレクトロニクス業界を振り返る

2020年は、コロナ禍で世界経済は大打撃を受けたが、世界の半導体出荷金額は19年12月から20年10月まで11ヵ月連続でプラス成長を維持。年間の成長率も19年の▲12%減から20年は+5%程度に回復が見込まれる。結果的にコロナ影響が「取るに足らぬ出来事」に留まった理由は、テレワーク関連や巣篭り景気が自動車や産業分野の落ち込みをカバーできたことが大きい。半導体の用途別構成比(2019年実績)はコンピュータが28%、通信が28%、民生が13%。一方、自動車、産業はそれぞれ12%に留まる。人の移動には制限が加わっても、データの移動は止まらず、むしろ活発化したことが、半導体市場の回復に結び付いたと言えよう。

2021年のエレクトロニクス業界の展望

2021年もコロナ影響は残るだろう。だが、データセンターの増強、スマホの5G化が進み、これを支える半導体の微細化投資も「ムーアの法則」に則り継続しよう。米国による禁輸措置により、中国の華為技術(ファーウェイ)向けの出荷が20年9月15日以降、止まっているが、同社が抜けたシェアを取りに行こうとする動きは、既に中国の他のスマホメーカーの間で活発化している。このため、ファーウェイショックの影響を受けたデバイス関連需要も21年半ばごろから再び成長トレンドに復帰していこう。2021年から米バイデン政権が始まる。米中関係の変化を正確に予測することが現時点では困難だが、パリ協定で提唱されたSBT(Science-based Targets:世界の気温上昇を産業革命前より1.5℃以下に抑えることを目指す目標)に対する取り組みはトランプ政権時に比べると大きく進展が見込まれる。よって、xEVや再生可能エネルギー関連など温室効果ガスの削減に寄与するテクノロジーへの更なる投資拡大が期待される。

2021年のエレクトロニクス業界の注目のテーマ、キーワード

注目テーマとしては、5Gにおけるミリ波対応の増加、スマホカメラの高機能化、自動車の自動運転及びエレクトリフィケーション(電動化)への取り組み加速、AIやIoTの社会実装の進展、ホームネットワーク(つながる家電)による「家のスマート化」の進展、などが挙げられる。2021年からは特区制度やローカル5G、AIを活用した「スーパーシティ構想」の実証実験が日本各地で開始される。社会インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)も重要な投資テーマとなろう。

和泉 美治
SBI証券 企業調査部(エレクトロニクス、半導体・電子部品担当 シニアアナリスト)

1983年にエルコインターナショナル(現:京セラエルコ)に入社。1990年に英国バーミンガム大学にてMBAを取得。1991年よりUBS証券、JPモルガン証券の株式調査部で産業エレクトロニクス、民生エレクトロニクス、半導体・電子部品等の業界・企業分析に携わってきた。大型株に加え、アナリストカバレッジの少ない中小型の調査にも注力。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。2008年から2012年Institutional Investor誌アナリストランキング、日経ヴェリタスでも常に上位にランクイン。2018年4月より現職。

2021年セクター別予想

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