J-REIT公募増資ができる銘柄が限られる中、ポートフォリオの改善に注力するJ-REITに注目

2020年のJ-REIT市場の振り返り

2020年のJ-REIT市場を見ると、年初はファンダメンタルズが堅調なJ-REITに資金が流入し、東証REIT指数は2/20に2,250.65ptまで上昇するなど、高水準で推移した。3月中旬にかけて、コロナウイルスの国内での感染拡大、経済活動の自粛から実体経済への懸念が強まると投資口価格が大幅に下落し、3/19の同指数は1,145.53ptと、僅か1ヵ月で半値程度となった。その後は急落の反動や、割安感に注目した投資家による買い戻しの動きから、6月上旬まで上昇基調となった。特に賃貸事業収益が安定している物流施設、住宅REITが選好された。
2020年半ば以降の東証REIT指数は、概ね1,650pt~1,750pt程度の狭いレンジ内で推移した。6月下旬以降、物流施設REITの公募増資が相次ぎ、投資家の間で需給悪化懸念が台頭、また、住宅REITで東京23区の稼働率が低下傾向となると、物流施設、住宅REITが軟調となった。その一方で、売り込まれていたホテル、商業施設、オフィスREITが割安感から買い戻された。
コロナウイルスによるJ-REITの業績への影響は最悪期を脱しつつあり、テナントからの賃料の減額要請も少なくなってきた。11月以降はワクチンの開発や承認という動きが見られ、東証REIT指数は緩やかながらも上昇傾向となっている。

2021年の展望

2021年は、コロナ禍への懸念は依然としてあるものの、ワクチン接種の広がりや東京オリンピックに対する期待もあり、J-REIT市場は緩やかながらも堅調推移すると考える。投資家心理に影響を与える業績も年後半にかけて改善しよう。2021年上期は、コロナ禍からの回復過程にあり、公募増資による外部成長ができる銘柄が限られる中、ポートフォリオ・クオリティの改善を目指すJ-REITは多く、2021年下期は増収・増益・増配となる銘柄が増えると考えられる。ワクチンの開発・承認・接種の動きがさらに進展すれば、経済活動が活性化し、企業業績の改善からJ-REITの業績も回復する可能性が高いと考える。

2021年の注目のテーマ、キーワード

2021年の注目テーマ、キーワードは、「コロナワクチン」、「資産入替」、「在宅勤務・テレワーク」、「シェアオフィス・サテライトオフィス」、「公募増資」、「巣籠り消費」、「eコマースの進展・拡大」など。ウィズコロナの中で働き方や消費行動に変化が見られる中、それに適応したサービスを提供する銘柄、あるいは資産入替によるポートフォリオ・クオリティを高める銘柄に注目が集まると考える。

並木 幹郎
SBI証券 企業調査部(J-REIT担当 アナリスト)

早稲田大学を卒業後、1997年に山一證券に入社。山一証券経済研究所に出向。その後2社を経て2000年に日興アセットマネジメントに入社。マクロ調査部門にて国内株式市場のマーケットアナリストを担当。2004年8月にみずほ証券に入社。金融市場調査部において、10年間にわたりJ-REITおよび国内不動産市場の調査・分析に携わってきた。2015年10月に大和証券に入社、建設業界(中小型銘柄)のアナリスト業務を担当。2016年9月に平和不動産アセットマネジメントに入社し、平和不動産リート投資法人のIR業務に携わる。2020年1月にSBI証券に入社。公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト。一般社団法人不動産証券化協会認定マスター。

2021年セクター別予想

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