銀行・金融与信費用の懸念が残る中、バックヤード、チャレンジャーバンクに注目

2020年の振り返り:コロナの影響はリーマンショックとは異なるものだった

新型コロナウイルスの影響は、日米欧において、当初リーマンショック後と同じような株価の下落となった。しかしその後、株価は回復し、リーマンショック時とは異なる軌跡を描いた。これは銀行の資本が毀損した訳ではないこと、中央銀行の緩和策や政府の資金供給などが要因であろう。11月までは、配当や自己株式の取得に関して当局が明確に規制しなかった邦銀のインデックスが、規制のあった欧米の銀行インデックスをアウトパフォームしたが、その後株主還元緩和の報道で欧米の銀行インデックスは上昇してきた。
グローバルバンクの中では、市場のボラティリティを収益機会とする投資銀行の株価がアウトパフォームし、与信費用の増加が懸念される商業銀行がアンダーパフォームした。日本の銀行の中では、地銀の株価がメガバンクをアウトパフォームした。

2021年の展望:与信費用の懸念は2021年に持ち越し

2021年は、貸出金の増加により、利息の収益は堅調であろう。経済活動が2020年よりも高まることで、手数料収益なども戻ってくる。経費の削減、抑制も継続して行われるだろう。
問題は与信費用である。21年3月期の上期決算において、与信費用はメガバンクと地銀等で異なるものとなった。メガバンクは海外での与信費用を計上する一方、海外のエクスポージャーが小さい銀行の与信費用比率はメガバンクを下回った。現時点では企業の資金繰りは、公的支援や銀行の融資で確保されているが、売上の回復が伴わないと、2020年において、銀行は引当を積まざるを得なくなるだろう。
世界的に新型コロナウイルスの早期収束となれば、2020年にアンダーパフォームした大手行の株価が優位だろう。しかしそうでなければ地銀の株価の優位が続くだろう。

2021年の注目:「バックヤード」、「チャレンジャーバンク」

こうした中で銀行は効率化のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)化をさらに進めようとしている。キーワードの一つは「バックヤードの効率化」であろう。バックヤードは事務を行う部署、営業・フロント以外ということである。銀行はここに大きなリソースを割いているので、どれだけ削減できるかということが効率化の要因である。もう一つのキーワードは「チャレンジャーバンク」であろう。一からシステムを構築し、銀行免許を取得し、デジタルネイティブをターゲット顧客とする、いわば日本版「チャレンジャーバンク」が出現する。どんなUIでどんなUXを提供するかが期待される。
デジタライゼーション、DX化では遅れていると見られている銀行セクターにも、大きな変化が見られる年になるだろう。

鮫島 豊喜
SBI証券 企業調査部(銀行業界、金融担当 シニアアナリスト)

1983年にシティバンクN.A.東京支店に入行。1995年にSanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しアナリストとしてのキャリアをバイサイドからスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。
アナリストとして、20年以上一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式の立場から見てきた。マクロに連動する業界ではあるが各社のファンダメンタルズ分析も重視したリサーチを行う。メガバンクから地方銀行までをカバー。米国コロンビア大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。

2021年セクター別予想

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