化学・合繊注目テーマは、「半導体」・「EV」・「カーボンニュートラル」

2021年の化学・合繊業界を振り返る

化学業界は、2021年前半の北米寒波による石油化学生産設備停止などで需給タイトとなり、製品市況が6月ころまで高騰し、総合化学メーカーを中心に業績予想の上方修正が相次ぎました。半導体も5Gや自動車向け需要が拡大し、世界シェアが高い先端半導体向け材料を中心に出荷が好調に推移しました。しかしながら、夏以降は石油化学の生産設備の稼働が戻るなか、原料ナフサなどの価格上昇に対して製品市況が下落、採算も低下したことから業績も上期でピークとなりました。業界の動きとしては、各社で「カーボンニュートラル宣言」が発表され、2030年までのGHG排出大幅削減、2050年ネットゼロの目標が打ち出されました。コロナ関連では、コロナウイルス迅速診断キットやPCR検査試薬などの需要が拡大しました。

2022年の化学・合繊業界の展望

2022年の化学・合繊業界ですが、石油化学においては、2021年前半の市況高騰による採算改善の反動で、上期に収益低下が予想されます。一方、ニッチ市場でグローバルトップシェア製品を多く持つ中堅化学メーカーの収益環境は相対的に堅調見通しです。電子材料は、半導体の需要拡大や5Gの普及が続くなかシリコンウエハーを中心とした需要拡大が続くとみています。また、中国での有機ELスマホの需要拡大に伴うポリイミドワニスや放熱材料の出荷増も見込まれます。ライフサイエンスでは、CDMO(バイオ医薬品開発・製造受託)、CRO(医薬品開発受託)事業における化学メーカーの存在感が高まる年になると予想します。化学業界では、M&Aによる周辺事業領域の拡大や汎用石油化学の再編に向けた取り組みなどが想定されます。

2022年の注目テーマは、「半導体」・「EV」・「カーボンニュートラル」

「5G」の普及で半導体の微細化が進み、高精度のシリコンウエハーやEUVレジストの需要拡大が加速すると考えます。また、電気自動車(EV)需要が中期的に拡大するなか、EV向けリチウムイオン電池材料では、日本メーカーが高いシェアを有するセパレータやバインダーの需要拡大が期待されます。カーボンニュートラルへの取り組みは、CO2の排出量が多い化学業界において中期的には最重要テーマになると思われます。脱炭素技術に加え、リサイクル技術革新も将来のビジネスチャンス拡大につながると想定されます。プラスチックリサイクルでは、アンモニアへの原料転換技術や廃PETボトルからの再生ポリエステル繊維生産技術などが注目されます。水素技術では、世界最大規模となる大型アルカリ水電解システムに期待しています。

澤砥 正美
SBI証券 企業調査部(化学・合繊業界担当 シニアアナリスト)

1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、米国化学大手の日本法人であるデュポン・ジャパンにて、日本の化学大手との合弁事業の設立・運営などに従事。1990年からは化学業界のアナリストに転じ、クレディ・スイスなどの外資系投資銀行にて活躍。30年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。日経アナリストランキングやInstitutional Investorsランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経アナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。リチウムイオン電池材料、自動車軽量化素材、ライフサイエンス分野のリサーチにも注力している。

2022年セクター別予想

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