銀行・金融低ROEでも高配当を目指すべき

2021年は2020年のリバーサル

当社のカバレッジ企業と欧米の大手銀行の騰落率を見ると、カバレッジよりも欧米の銀行のパフォーマンスがよく、カバレッジの中では大手行、地銀、その他金融の順であった。これはちょうど2020年と逆の動きであった。欧米の銀行は利益の回復、自社株買いの再開などが評価されたと思われる。特に米国の銀行のROEが10%-15%にまで回復したが、邦銀には当面望めないことであろう。大手行、地方銀行も昨年度よりも業績は回復し、増配、自社株買いといった株主還元の発表も相次いだ。しかし、昨年度からの変化率(デルタ)といった意味では欧米よりも小さかったことが、パフォーマンスの差につながったと思われる。

2022年の展望

金融政策としては、米国のテーパリングの終了と金利の引上げがあるだろう。欧州でも同様な動きが見られる可能性がある。翻って日本のCPIの上昇率は鈍く、安定して物価が2%以上上昇するといった状況は考えづらい。マイナス金利政策は継続されるだろう。
その環境下で、金融機関は資本配賦の最適化、資産の効率性向上、経費の効率化をさらに進めなければならない。一方で、AI、API、BaaS、Blockchain、CBDCなどの実装がさらに加速するフェーズに入っていく。これまでやってきたDXが本物かどうか、問われる年になるだろう。
若年層の投資は静かに広まっていくのではないかと考えている。

2022年の注目のテーマ、キーワードなど

2022年も引き続き、日本の金融機関にとって、ESG/SDGsの取組みが加速する年になるだろう。そして以下の理由で、「低ROEでも高配当」を目指すべきだとSBIでは考える。 地域別の銀行の特徴は、1) 欧州銀は低ROE、低PBR、高い配当利回り、2) 米銀は高ROE、高PBR、低い配当利回り、3) 邦銀は低ROE、欧州銀よりも低い配当利回りとPBR、というものである。ROEを高めるという目標を持つ邦銀は多いが、自社株買いを配当という形で還元し、欧州銀のパターン(低ROE、高配当利回り)を目指してもよいのではないかとSBIでは考える。ESG/SDGsの取組みは長期的には金融セクターに、「持続可能な」利益をもたらすであろうが、ROEの改善・向上に資するかどうかは不透明である。そうした流れにマッチするのは「低ROEでも高配当」ではないだろうか。

鮫島 豊喜
SBI証券 企業調査部(銀行業界、金融担当 シニアアナリスト)

1983年にシティバンク東京支店に入行。1995年にSanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しバイサイドアナリストとしてスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。アナリストとして、20年以上一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式の立場から見てきた。マクロに連動する業界ではあるが各社のファンダメンタルズ分析も重視したリサーチを行う。現在は銀行とその他金融をカバー。米国コロンビア大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。

2022年セクター別予想

ご注意事項

  • ・当社の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスク情報につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ及び金融商品取引法に係る表示並びに契約締結前交付書面等の記載内容をご確認ください。
    金融商品取引法に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません