2020年から続いているChip(半導体)不足の状態が一向に解決されず、自動車メーカーは生産計画の相次ぐ引き下げに追われた。次が春先の上海ロックダウン。Covid-19感染拡大により上海地域で大規模な外出禁止措置が出され、多くの自動車・部品工場が数か月に亘って操業停止。半導体不足に加えて、他の中国製部品の不足が中国内のみならず、日本や北米での生産を直撃した。一方で円が独歩安。年初の対ドル110円台から夏場には150円まで下落、輸出比率が高い自動車業界には増益要因となった一方で、資材・エネルギー価格の上昇という負の側面がボディーブローのように効き、年末にかけ業績の停滞感が台頭した。
自動車・AI・ロボットハードからソフト重視へ、ICEからEVへ、更なる転換が進む年
- 2022年はCovid-19、Chip不足、Cheapな円と3Cに振り回された
- 2023年は米国リセッション入り・中国景気減速が前提だが受注残の解消で生産増を狙う
- 2023年の注目のテーマは引き続きEVとバッテリー
2022年はCovid-19、Chip不足、Cheapな円と3Cに振り回された
2023年は米国リセッション入り・中国景気減速が前提だが受注残の解消で生産増を狙う
2023年の新車需要だが、米国微増、中国下落、アジア堅調、欧州弱めと予想。米国は景気後退を前提としても2022年の1,400万台から2023年は1,500万台の需要を見込む。所謂代替需要がなお高水準、受注残が積み上がり、在庫も例年の半分、中古車価格も歴史的な高原状態。金利上昇は懸念だが、車が生活必需品である米国ではまだ危険水域ではない。中国ではEV補助金が打ち切られ、足元のコロナ感染拡大で2022年同様、工場稼働停止・販社営業停止などによる懸念が台頭。アジアは堅調で特にインドが初めて日本を抜き、世界第3位の新車市場になる見込み。
2023年の注目のテーマは引き続きEVとバッテリー
2023年も電動化が最大のテーマ。バイデン政権によるIRA(インフレ抑制法案)成立で、EV及び電池やその周辺部品など、米国内での現地調達を高めるための積極的な電動化投資が継続。中国でもEVが既に新車全体の30%前後に達し、米中対立などリスクを考慮に入れつつも、なおEVへの投資拡大は続く。SDV(Software Defined Vehicle)への関心も高まる。EVではハード面での差別化がしにくいこともあり、ソフトでいかに稼げるか、ADAS(自動運転)・サイバーセキュリティー・OTA(Over the Air)などの領域に、より開発・投資の焦点が移ることが予想される。
遠藤 功治
SBI証券 企業調査部(自動車、AI・ロボット担当 シニアアナリスト)
1984年に野村證券入社、その後欧米系外資系投資銀行数社にて、通算の証券アナリスト歴は35年に上る。その大半を自動車・自動車部品業界の担当として業界・企業分析に携わる。日経アナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは、常に上位の評価を得る(1999年日経アナリストランキング自動車部門第1位)。2016年7月からSBI証券にて、企業調査部を立ち上げると共に、引き続き自動車・自動車部品のリサーチを担当、最近ではイスラエルやインド・シリコンバレー等のスタートアップ企業を中心に、自動運転(ADAS)・人工知能(AI)等の分析にも従事、また今後拡大が予想される、宇宙関連分野の企業発掘も手掛けている。
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