2022年はほぼ一年を通じて邦銀の株価は欧米のグローバルバンクのそれをアウトパフォームした。ロシアのウクライナ侵攻、欧米の政策金利引上げがその要因である。2021年のリバーサルが起きたと言ってもよいだろう。
一年前に邦銀は「低ROEでも高配当」を目指すべきと述べたが、大手行と大手地銀は増配や自己株式取得などによる還元強化を行った。いくつかの地銀は、還元強化や大胆な施策の導入など、株主との対話によるものと思われる動きもあり、これまでとは異なる株価の上昇要因となった。
銀行・金融金融政策変更の期待と銀行株
2022年の振り返り:邦銀株優位の一年だった
2023年の展望:金融政策期待はいつまでか
2023年4月の日本銀行の総裁交代が近づくにつれて、マイナス金利解除の期待がより具体的になっていくだろう。2023年の前半はそれが銀行株の上昇を支えると考えている。問題は銀行株価がいつまで上がるかということである。日銀による最後の政策金利の引上げは2006年7月に行われた。銀行株は2005年7月から上昇を始めたが、ピークは金融政策変更前の2006年3月であった。
2023年の後半に、FRBによる政策金利引上げのピークが見えてくれば、欧米の銀行株が邦銀をアウトパフォームしていく可能性もあるだろう。外国債券の含み損の処理による損失計上はしばらく続くだろうが、2022年ほどの大きさとはならないだろう。代わりに円債の評価損が懸念されることとなろう。
2023年の注目のテーマ、キーワードなど
まず、日銀の金融政策変更(マイナス金利解除の期待)が挙げられる。YCCの上限引上げは2022年12月に行われた。これにより固定金利の上昇はあるが、貸出のうち過半を占める変動金利貸出に影響を与えるのはマイナス金利解除である。
資源価格、エネルギー価格の高騰や円安影響による、資産の質の悪化懸念は頭に入れておくべきだろう。
政策保有株式の売却の加速、株主還元の強化などは継続すると思われる。
多くの銀行でAPIが整備されつつある。BaaSの本格的な拡大は2023年からだろう。
NISAの複雑性がなくなり、投資額の拡充、投資期間が恒久化されることは、資産運用ビジネスにとってプラスとなるだろう。
鮫島 豊喜
SBI証券 企業調査部(銀行業界、金融担当 シニアアナリスト)
1983年にシティバンク東京支店に入行。1995年にSanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しバイサイドアナリストとしてスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。アナリストとして、20年以上一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式の立場から見てきた。マクロに連動する業界ではあるが各社のファンダメンタルズ分析も重視したリサーチを行う。現在は銀行とその他金融をカバー。米国コロンビア大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。
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