情報通信サービスコロナを契機とした環境変化や5G普及で新たな需要創出へ

2022年の情報通信サービスセクターを振り返る

2022年は、KDDIの大規模通信障害や、楽天の0円プラン廃止などの話題があった。しかし、楽天の携帯事業本格参入や携帯各社の5Gサービス開始などがあった2020年や、政府の値下げ要請を受けて、各社が割安なオンラインプランを相次いで提供開始した2021年に比べ、新たなトピックスの少ない1年であった。一方、収益面では、値下げ影響で低下傾向にあったARPU(加入者一人当たりの月間売上)に底打ちの兆しが出始めた。新たな成長源として注力している、ECや金融決済などの金融サービスの比率上昇も続いており、各社の業績は堅調に推移している。また、2023年に向けては、楽天モバイルに対するプラチナバンド(使いやすい周波数帯域)再配分の動きなど、携帯電話の電波の割り当て方針に対する議論が活発化している。

2023年の情報通信サービスセクターの展望

将来の情報通信業界の成長源として期待されている5G(第5世代携帯)サービスは、2020年に開始されたが、現時点では緩やかな立ち上がりである。個人向け用途が中心である現行の4Gサービスに対し、5Gサービスは法人用途を含め、より幅広い分野への展開が期待されるが、通信ネットワークの整備に加えて、新たなソリューション開発や、展開する業界の規制環境の整備、業界構造の変化などが必要となるため、立ち上げに時間を要している。しかし、政府のデジタル田園都市国家構想などの動きもあり、2023年後半にはこれらの取り組みが実を結び始めるとみられる。また、2022年3月にKDDIが他社に先駆けて、3Gサービスを終了。今後は、ソフトバンクが2024年1月末に、ドコモが2026年3月末に3Gサービスを終了する予定であり、3G終了に向けて5G端末へのシフトの動きも活発化するであろう。

コロナを契機に情報通信を活用する動きが活発化

保守的で終身雇用慣行が残っている日本では、情報通信を活用した合理化・効率化の推進を苦手としてきた。しかし、長引くコロナの影響で、この状況に変化の兆しが見られる。コロナ下で非対面を前提とした業務が広がり、様々なオンラインソリューションやモバイル環境を利用したオンライン会議などが定着し始めている。個人向けでも、小売店やコンビニが数多くある日本は、EC(ネット通販などの電子商取引)の普及率で他の先進国に対し出遅れていた。しかし、コロナを契機に、このEC化率も上昇傾向が加速し、それに伴いクレジットカードなどの非現金決済の利用率も上昇し始めている。5Gの普及も相まって、これらの動きを背景とした新規需要創出の動きは更に活発化するとみられる。

森行 眞司
SBI証券 企業調査部(情報通信サービス・インターネット業界担当 シニアアナリスト)

大和証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券、SMBC日興証券、シェアードリサーチ等で、30年以上に渡りアナリストを経験。過去の主な担当業界は、機械、自動車・部品、情報通信サービス等。また、6年半に渡り欧州に駐在し、欧州の情報通信、運輸、素材業界なども担当した。1992年以降は情報通信サービスを中心に担当。IT・情報通信・メディアセクターのチームヘッドも歴任する。 日経ヴェリタス、Institutional Investorのアナリストランキングでは常に上位にランクイン。トムソンロイターのスターマイン・アナリストアワードでは、通信部門で計4回の首位を獲得。2017年6月より現職。幅広いセクター経験を活かし、情報通信サービスの主力銘柄とともに、周辺銘柄の発掘にも注力する。

2023年セクター別予想

2022年SBI証券・注目ワード

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