2025年は自動車業界にとって非常に厳しい年となった。その最大のものは米トランプ政権による輸入品に対する追加関税である。それまで、日本から米国に輸出される乗用車には2.5%の関税がかかっていたが、これが一気に15%にまで引き上げられたのである。また、関税率が9月に15%に落ち着くまで、ほぼ半年にわたり27.5%の関税率が適用された。それまで日本車は米国で堅調な販売を続け、大半の日系自動車企業がCash cow(金のなる木)と位置付ける米国市場の恩恵を受けていたのだが、新たな高関税の影響で、業界全体で年間約3兆円の利益が吹き飛ぶことになった。各企業は合理化に加え、値上げや米国への生産シフトなど対応策の導入を試みているが、この“ニューノーマル”の環境下、今後非常に厳しい収益環境に直面することになった。
自動車2026年 プレ・シンギュラリティーの時代に入るクルマは、“次元が違う移動手段”の領域に入る。
- トランプ関税で約3兆円の営業利益が吹き飛んだ2025年
- 2026年のテーマは“60年ぶりの大型提携”、業界の大再編
- 2026年はプレ・シンギュラリティー入り、60年ぶりの丙午は3SがKey Words
トランプ関税で約3兆円の営業利益が吹き飛んだ2025年
2026年のテーマは“60年ぶりの大型提携”、業界の大再編
翻って、足元の2026年、業界が直面するであろうイベントは、“60年ぶりの大型提携”であろう。60年前、先の丙午の年に、グロリア・スカイラインなどの名車を生んだプリンス自動車を日産が買収、その事業規模を一気に拡大した。そのプリンスの最大工場であった村山工場は、何の因果かゴーンのリバイバルプランによってその後閉鎖された。それから60年、その日産はホンダと提携しようとしている。双方共に自動車部門は今期数千億円の営業赤字で早期に緊急手術が必要。規模の拡大・部品統合化・ソフトの共通化等により、ひょっとすると三菱自も巻き込んでの提携、ないしは合併が起きる可能性はそれなりに高いと考える。また、親会社の提携を機に、長らくの低利益率で青色吐息に陥っている系列部品メーカー、その大再編が同時に起きる可能性も出てくる。脱自動車で宇宙やAIなど、脱自動車や宇宙、AI分野などへのビジネス領域の拡大を図るが、なかなか厳しいのが現実である。
2026年はプレ・シンギュラリティー入り、60年ぶりの丙午は3SがKey Words
60年前の丙午、1966年は“いざなぎ景気”の始まりで、日本がモータリゼーションに突入した年、所謂“3C(Car・Cooler・Color TV)”が爆発的にヒットした。以来60年を経て、トヨタが世界最大の自動車生産台数を誇り、ホンダが世界最大の二輪車企業となった。さて、次の60年先を見る上で何がKeyとなるのか、それは”3S(Singularity・SDV・Space)”である。技術的進歩が横ではなく垂直に進むのがSingularityだが26年はその入口であるプレ・シンギュラリティーの段階。クルマは生成AIが設計、3Dプリンターが金型に代わってクルマを作り始める。ギガキャストなど過去の遺産になり下がる。クルマは全てがSDVとなり、その根幹はSOCが決める。ADAS(自動運転)などという言葉さえ生成AIとSOCの支配下ではレガシーの範疇であろう。最後はSpace、クルマの航続範囲にはSpaceも含まれる。トヨタがインターステラと、ホンダがアストロスケールとタッグを組んだ理由もここにある。また、スターリンクのように、自動車会社による宇宙での自社の通信ネットワーク構築が視野に入る年となる。“次元が違う移動手段”への脱皮、その兆候が驚くほど早く見え始めるのが、丙午の2026年なのである。
遠藤 功治
SBI証券 経済企業調査部(自動車、宇宙関連担当 経済企業調査部上席部長 チーフエグゼクティブアナリスト)
1984年野村證券入社、欧米系投資銀行数社にて、証券アナリスト歴今年で通算41年目、主に自動車・自動車部品業界の分析に携わる。 その間、日経アナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは常に上位に位置 (2000年日経アナリストランキング自動車部門第1位、2025年は3位)。その豊富な業界知識と語学力を生かし、金融業界のみならずテレビや新聞・雑誌を中心に、数々のマスコミ・報道番組にも登場、日本のみならず、海外も含めた自動車業界の現状につき解説を披露している。また、“トップアナリストの業界分析”(日本経済新聞社)など出版本も多数、日系の主要自動車会社・部品会社等にてセミナーや勉強会、講義の機会も多数。最近では、日本経団連や外国特派員協会での講演(東京他)、国連・ILOでの講演(ジュネーブ)や、ダボス夏季会議での基調講演などを行い、海外の自動車・自動車部品メーカー、また、大学・研究機関・国連関係の知己も多い。2016年7月よりSBI証券に移籍、企業調査部長としてアナリスト部隊を新たに立ち上げると共に、引き続き自動車・自動車部品関連業界の分析に従事、また近年では新たに宇宙関連企業のリサーチも開始、宇宙スタートアップ企業と自動車関連企業のマッチングなどにも取り組んでいる。
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