金価格金への構造的な資金流入が続く

トランプ関税が押し上げた2025年の金価格

2024年、金の業者間価格(米ドル建)※は+27.2%の大幅上昇でした。しかし、その勢いは2025年にさらに加速し、12月5日時点で前年末比+59.9%の、4,197.78ドル/ozとなりました(円換算して消費税を考慮すると1グラム当たり23,061円)。これは単なる価格上昇というよりは、世界の金融構造に深い影響を及ぼすシグナルといえます。
※Bloombergデータ

2025年3Qの金需要構成を見ると、価格急騰の影響で宝飾品需要は数量ベースで減少しました。一方で、同期間に金価格が約4割上昇しているため、購入金額はむしろ増加しています。つまり、需要は増えているのです。

注目すべきは、投資需要(金地金、コイン、ETF等)の急増と、中央銀行による高水準の購入です。この背景には、2025年4月に導入されたトランプ関税があります。米国が事実上、米ドル覇権の維持に背を向けたかのような政策転換は、世界の投資家と中央銀行に「ドル依存からの脱却」という強いインセンティブを与えました。結果として、金は単なる安全資産ではなく、通貨システムの再構築を象徴する存在になっています。

2025年3Q

需要量(トン) 構成比 前年同期比
宝飾品 419.1 33.3% -23.3%
原材料 81.6 6.5% -1.6%
投資 537.2 42.7% +47.2%
中央銀行 219.9 17.5% +10.2%

World Gold CouncilデータよりSBI証券が作成

2026年も続く混沌とした世界情勢、金への資金退避は不可避か?

2026年も、世界は不確実性に覆われています。この環境下では、金への資金退避が続くと考えるのが自然でしょう。下図は、セグメント別の購入量をもとに推計した米ドル換算の金購入額の推移です。過去の局面を振り返ると、地政学リスクと米ドルへの信頼低下がいかに金需要を押し上げてきたかが見えてきます。

2011年 ユーロ危機後、中央銀行による金購入額は8倍に急増
2014年 ロシアのクリミア併合で、地金などを中心に投資需要が急増
2022年 ロシアのウクライナ侵攻後、中国をはじめ新興国の中央銀行が積極的に金を購入
2025年 トランプ関税導入後、ETFによる金投資が急増

背景にあるのは、各国の外貨準備戦略の変化です。

ユーロ危機 → ユーロへの不安
ロシア制裁 → 米ドル以外の外貨準備を増やしたい
トランプ関税 → 米ドル依存を減らしたい

こうした要因は2026年も継続するどころか、リスクはむしろ増幅しています。共和党の苦戦が予想される米中間選挙を前にしたトランプ政権の過激な外交・金融政策、経済停滞に伴う国民の不満をそらすための中国の冒険的外交、出口の見えないロシアの軍事圧力、そして軍事費急増による欧州の財政懸念――米ドルやユーロへの不安材料は山積みです。

このような状況を踏まえると、金価格は2025年12月時点での 4,200~4,300ドル/oz の水準をさらに切り上げ、2026年末には5,000ドル/ozに達する可能性が十分にあると見ています。金は単なる安全資産ではなく、通貨システムの不安定化を映し出す鏡であり、世界の資金フローを方向づける存在になりつつあります。

チャート「2026年も続く混沌とした世界情勢、金への資金退避は不可避か?」

金価格は3万円を目指し、個人投資家にとって価値は一段と高まる?

我が国の個人投資家の視点で見れば、資産防衛手段としての金の重要性はこれまで以上に高まっています。金は「一物一価」の原則に基づき、世界のどこでも基本的に同じ価格で取引されます(運賃や税金などの影響を除く)。このため、円建ての金小売価格は次の計算式で概算できます。

円建金価格=ドル建金価格(グラム換算)×米ドル円相場×(1+消費税率)

2026年以降の日本を取り巻く状況を考えると、円安トレンドは容易に変わりません。高市政権による積極財政、少子高齢化、膨大な公的債務――これらは円の構造的な弱さを示しています。一方で、米国の利下げ、日本の利上げに加え、円安進行による物価高騰を抑えたい通貨当局の意向もあります。結果として、2026年は通貨当局の口先介入に加え、実弾を伴う市場介入が行われ、160円/ドル前後の水準を維持する可能性が高そうです。

ここで、2026年の米ドル建金価格を 5,000ドル/oz、為替を 160円/ドル と仮定すると、
円建金価格=(5,000ドル ÷ 31.1035g) × 160円 × (1+10%) ≒ 29,232円(税込)
となります。これは、2025年12月初めの 23,000円程度から約30%高い水準であり、3万円を目指す展開が現実味を帯びてきます。

さらに、中長期的には円安の一段の進展に加え、消費税増税も視野に入ります。その分、円建て金小売価格は上昇圧力を受け続けるでしょう。世界的なドル離れの潮流、インフレ、円安、そして消費税増税――こうした複合リスクから資産を守る手段として、金の存在感は今後ますます高まると考えられます。

なお、SBI証券では、純金積立、日米の金ETF、金に投資する投信、金先物(堂島)、金CFDと業界屈指の多彩な金への投資手段が提供されているので、ニーズに合わせてご活用ください。

土居 雅紹

土居 雅紹
SBI証券 投資情報部 執行役員(投資情報部管掌) (CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会認定アナリスト)

大和證券での株式アナリスト(ゲーム、メディア業界)、大蔵省財政金融研究所勤務、金利デリバティブ営業に従事した後、ゴールドマン・サックス証券にて個人向け証券化デリバティブ事業を立ち上げる。ヘッジファンド系デリバティブハウスCOO、楽天証券常務執行役員(株式・デリバティブ事業本部長)を経て2025年9月より現職。米ノースカロライナ大学MBA 主な著書:『最強の「先読み」投資メソッド』(ビジネス社)、『勝ち抜け!サバイバル投資術』(実業之日本社)

ご注意事項

  • ・SBI証券の取扱商品は、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)、店頭CFD取引(SBI CFD)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI 証券WEB サイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。
    金融商品取引法等に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません