銀行銀行株の持続性が問われる年になるだろう

2024年の振り返り

2024年の日本の銀行インデックスの騰落率はTOPIXを大きく上回った(12月5日時点)。再度、欧米の銀行インデックスのパフォーマンスを上回った。しかし、米国の銀行インデックスとの差は小さく、ドルベースでは若干の差で下回った。3月にはようやくマイナス金利政策が終了し、7月には0.25%への引上げがあった。7月の利上げ直後の8月は、円高の進行、米国経済の先行き懸念などで銀行株も大きく下落したが、その後回復した。
中間決算で通期業績の上方修正を行う銀行も多く、増配や自己株式取得など還元の強化も見られ、銀行インデックスは12月に入り7月の高値を超えた。

2025年の展望:ターミナルレートと3つの持続性

2025年も引き続き、日銀の政策金利の引上げが注目されるだろう。0.50%への引上げは多くの市場参加者にとっては当たり前だろうが、最終的に0.75%なのか1%なのか、それとも1%を超える水準まで行くのかということが注目されるだろう。
一方で3つの持続性についての議論が起きるだろう。一つ目は貸出の需要である。2022年8月から前年比4%前後の伸びを示している。9月と10月にややスローダウンしたが一時的なのか、鈍化の始まりかはまだ分からない。二つ目は低い与信費用である。倒産件数は増加しても銀行の与信費用はそれほど増加していない。三つ目はROEの改善である。セクターのPBR向上にはROEの改善が必須であるだけに、改善の持続性は市場が気にしている点である。

2025年の注目のテーマ:預金獲得競争と法人決済

2025年の注目のテーマは預金獲得競争と法人決済であろう。金利のある世界となり、預金は銀行にとって非常に大事な資源となった。貸出の伸びに比べ、預金の伸びは従来よりもかなり低い水準となっている。資金を預金ではなく投資に回す人も増えている。また、人口減少も要因の一つであろう。デジタル(アプリなど)とリアル(店舗など)でいかに個人顧客を掴むかの競争は始まっている。法人預金においては、単にメインバンクだからといって預金を獲得できるという時代ではなくなっている。
法人決済は個人決済よりも規模が大きく、また決済の場面も複雑である。デジタル化、自動化の余地も大きい。大手行、地方銀行が注力すべき領域であろう。

鮫島 豊喜

鮫島 豊喜
SBI証券 企業調査部(銀行担当 シニアアナリスト)

1983年にシティバンクN.A.東京支店に入行。1995年にコロンビア大学ビジネススクールを卒業後、Sanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しアナリストとしてのキャリアをバイサイドからスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。
その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式市場の立場から見てきた。メガバンクから地方銀行までをカバー。

ご注意事項

  • ・SBI証券の取扱商品は、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI 証券WEB サイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。
    金融商品取引法等に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません