放送・広告海外で稼ぐ企業、自己株買い、業界再編に注目

2024年の振り返り

2024年の広告市況は順調に推移した。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、年初から10月までの広告業売上高累計は前年比2%増の4.7兆円と、2021年ぶりのプラス成長。主要な種目では、インターネット広告が同6%増の1.3兆円、テレビ広告が同2%増の1.0兆円。年末まで同様に推移すれば、インターネット広告は成長率が改善し、テレビ広告は3年ぶりのプラス成長となる見通し。広告主当たりのマーケティング予算が回復したと見られる。消費財メーカーや小売事業者等の内需系の広告主における値上げ浸透や新商品の増加や、外需系の広告主における円安等を背景とした業績拡大が追い風となった模様。株価については、サブセクター毎の傾向はまちまちであり、個別銘柄の選別が進んだ印象。

2025年の市況展望

広告市況は2025年も堅調と予想する。テレビ広告においては、東京地区のスポット広告市況は2024年10-12月まで前年比1桁前半~半ばのプラスで推移しており、2025年1月以降も需要は順調な模様。インターネット広告に増額する形でテレビに出稿する傾向が強まっていると見られ、年明け3月頃まではテレビ広告、インターネット広告共に良好な環境が続こう。4月以降のテレビ広告は、人口動態や消費者の可処分時間獲得競争の激化を踏まえると視聴率の改善は想定しにくく、広告主の業績や新商品の動向が市況を左右しよう。インターネット広告市場も成熟化の様相であり、年間の成長率見通しは前年比6-7%増程度がベースシナリオとなろう。動画広告、インフルエンサーマーケティングは相対的に高い成長が期待されよう。

海外で稼ぐ企業、自己株買い、業界再編に注目

国内の広告市場の成長は限定的であり、改めて海外で稼ぐ企業に注目したい。海外を念頭に置いたアニメ等のIP戦略の推進、海外展開を前提とした組織・サービス開発の遂行、第2次トランプ政権の政策で恩恵を受ける海外子会社を保有する企業等に期待したい。継続的な自己株買いが期待される企業群も注目。政策保有株式縮減の潮流の中、政策保有株式の被保有企業は自己株買いで対応するケースが散見される。2024年12月に世界3位の広告代理店・米オムニコム・グループが世界4位の米インターパブリック・グループを買収すると報道された。広告会社の事業環境は楽観できず、国内においてもマーケティング関連企業の統合、再編、構造改革が一段と進もう。

宝水 裕圭里

宝水 裕圭里
SBI証券 企業調査部(放送・広告、通信担当 シニアアナリスト)

2009年に東海東京証券に入社し、事業法人営業、機関投資家営業に従事。2017年に東海東京調査センターに出向し、株式アナリストとして放送・広告セクターを担当。主力企業に加え、周辺の中小型株の発掘にも注力する。2022年11月より現職。
2024年の日経ヴェリタスアナリストランキングは放送・広告セクターで5位。

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