小売・外食訪日外客数増続くが、インバウンド消費は高額品中心にピークアウト感も

日本の大手小売業も、グローバルな資本の論理の洗礼を浴びる

2024年は、国内小売大手であるセブン&アイ・ホールディングスにとって激動の1年となるとともに、国内小売業の経営者に大きな衝撃を与えた。アクティビスト(物言う株主)として知られる米投資ファンドのバリューアクト・キャピタル・マネジメントからの井坂社長の退任などを含む株主提案に始まり、カナダの大手コンビニエンスストアのアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案、それに対抗するための創業家の資産管理会社である伊藤興業からのMBO(経営陣による買収)提案と、グローバルな資本の論理の洗礼を立て続けに受けた。日本の大手小売業も、ドメスティックな産業との言い訳はできなくなり、真のグローバル対応が求められるようになってきた。

2025年の小売業界の展望

2025年も、インフレとインバウンドが個人消費の焦点となろう。インフレにより、さらに消費者の節約志向は強まり、ディープ・ディスカウントストアやフード&ドラッグタイプのドラッグストアの躍進が続く流れは変わらないとみている。中間価格帯のスーパーマーケットの多くが疲弊してくる中で、高い競争力を有するディスカウントストア各社は、客数の増加から売上総利益率の改善に注力し始め、営業利益率も高まってこよう。2025年も訪日外客数の増加基調が続くとみている。一方で、ラグジュアリーブランドなどの高額消費は、為替相場次第の面はあるが、中国の景気後退・成熟化などにより、ピークアウト感が強まってこよう。

「103万円の壁」の撤廃で、小売・外食の人手不足が大幅に緩和か

2025年度の税制改正では、「103万円の壁」の見直しが焦点となっている。制度が複雑なことによる誤解なども含めて、多くの学生や主婦が働き控えをする要因となってきた。所得税・住民税の基礎控除の引き上げだけでなく、社会保険料などを含めた制度設計の見直しが行われれば、手取りの増加で個人消費に好影響を与えよう。それ以上に小売・外食各社にとっては、「働き控え」がなくなると、熟練したパート・アルバイトが長時間働けるようになり、人手不足が大幅に緩和することが期待される。特に、働き控えが増える10-12月は、外食やスーパーマーケットは例年人手不足が深刻となっていたが、派遣やスキマバイトなどで手当てしなくても乗り切れるようになろう。

田中 俊

田中 俊
SBI証券 企業調査部(小売、外食、旅行、ホテル担当 シニアアナリスト)

1988年に山種証券(現SMBC日興証券)入社、支店営業、投資情報部などを経て、山種調査センター(現SMBC日興証券) に出向。
約20年に亘り、小売、レジャー・アミューズメント業界のアナリストとして、業界・企業分析に携わる。2016年12月より現職。
トムソン・ロイターアナリスト・アワード・ジャパン2016にて、収益予想部門ホテル・レストラン&レジャーで業種別1位。主力銘柄のカバーをしつつ、機動力を生かして、アナリストカバレッジの少ない地方銘柄、中小型銘柄の発掘にも注力。

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