化学・合繊キーワードは、「世界No.1」、「蓄電池・水素」、「事業構造改革」

2024年の化学・合繊業界を振り返る

2024年の化学業界は、石化関連事業における市況上昇や在庫受払差改善などにより、総合化学メーカーの業績が大幅に改善しました。半導体・電子材料メーカーも、ディスプレイや半導体向けの需要回復により収益は好調でした。合繊メーカーは、原料高の製品への価格転嫁に加え、需要回復や構造改革などコスト削減策も寄与して、収益は改善しました。

2025年の化学・合繊業界の展望

2025年の化学・合繊業界ですが、総合化学においては、中期的な需要減速や競争激化およびGHG排出量削減の環境下、汎用石油化学事業でのエチレンプラント設備集約や不採算製品からの撤退など業界再編の動きが加速するとみています。電子材料については、半導体市場が2025年からAIサーバー向けなど先端半導体用途を中心に2030年に向けた材料開発や設備増強が進捗する見通しです。特に先端半導体のカギを握る後工程材料での開発加速および新製品需要拡大が期待されます。ライフサイエンスでは、CDMO(バイオ医薬品開発・製造受託)、CRO(医薬品開発受託)事業における化学メーカーの存在感がさらに高まる年になると考えます。電子材料、ライフサイエンスともにグローバルニッチトップ製品を多く持つ中堅化学メーカーの収益環境は、相対的に堅調見通しです。

2025年のキーワードは、「世界No.1」、「蓄電池・水素」、「事業構造改革」

近年は、中国が電気自動車(EV)の販売台数を急拡大させているほか、そのEVの主要部材であるリチウムイオン電池(LiB)は中国が世界トップの位置を占めています。このほか、石油化学など素材産業でも能力増強により中国の存在感が高まっています。 その環境下においても、先端半導体材料などは依然「世界No.1」シェアを確保している日本企業が多く見られます。また、脱炭素の動きが加速するなか、クリーンエネルギーである「水素」の採用が2025年から拡大する見通しです。風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、天候や時間帯、季節によって発電量が変動するため大型「蓄電池」での電力貯蔵が必要です。また、2025年の化学業界では石化再編や不採算事業からの撤退による「事業構造改革」が加速するとみています。

澤砥 正美

澤砥 正美
SBI証券 企業調査部(化学・繊維、ガラス・紙パ・その他素材、電力・ガス・石油担当 シニアアナリスト)

1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、デュポン・ジャパンにて合弁事業の設立・運営および化学品の開発・マーケティングに従事。1990年より、クレディ・リヨネ、BZW、HSBC、クレディ・スイスなどの外資系証券会社にて、32年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。
日本証券アナリスト協会ディスクロージャー研究会における化学・繊維専門部会の部会長として化学・繊維業界のディスクロージャー評価の向上にも尽力。アナリストランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経ヴェリタスアナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。主力銘柄のカバーに加え、アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。

ご注意事項

  • ・SBI証券の取扱商品は、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI 証券WEB サイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。
    金融商品取引法等に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません