年前半、年後半でパフォーマンスが大きく変わる難しい1年でした。年前半は好調でした。鈍い中国景気のなかでも商品市況が大崩れしなかったこと、円安進行、2025年3月期会社計画に対する上振れ期待、等が重なった結果と考えられます。
一方、年後半は軟調でした。特に8月初めの「令和のブラックマンデー」で大幅下落しましたが、伊藤忠商事以外は、その下落分を取り戻していない状況です。鉄鉱石・原料炭・原油などの商品市況の軟化、自動車、建機・産機などの市場低調、インフレや自然災害による食料関連事業の軟化、等が各社で観察されました。2025年3月期の会社計画に対する上振れ、そして追加の株主還元への期待は縮小した印象です。

総合商社トランプ新政権、株主還元、新しい中期経営計画に注目
昨年の振り返り
2025年の展望
事業不透明感が高まるなか、個別銘柄選別がより肝要となりそうです。切り口として、(1)ベースとなる資源部門、(2)経営方針が反映される非資源部門、(3)事業リサイクル、の3つが注目されます。
まず資源部門では、鉄鉱石、原料炭、原油、銅などが注目です。これらの市況動向は、豊田通商以外の各社に、相応の業績影響があります。次に非資源部門では、各社の経営方針が表れるため注目です。電力、ヘルスケア、食料、小売り、デジタル、不動産、リース、等で各社独自の戦略が打ち出されています。最後に事業リサイクルは、「育成期に投資し、商社が自ら育て、成長期に売却する」という総合商社ビジネスの基本です。このサイクルが回っているかどうかを素直に確認したいです。
2025年の注目のテーマ、キーワード
トランプ新政権の動向、株主還元、新しい中期経営計画が注目されます。(1)まずトランプ新政権の動向が最大のテーマとなりそうです。関税を例にすると、関税によってモノ、カネの流れが減ることでマイナス影響がありそうです。一方、関税を受けてサプライチェーンを再構築する動きが加速すれば、ビジネスチャンスでしょう。(2)株主還元は、最近における総合商社の重要なテーマです。商品市況がひと段落したなか、株主還元を維持・実行していくためには、事業リサイクルの巧拙が求められるでしょう。(3)新しい中期経営計画では、三菱商事と丸紅の2社が新しい中期経営計画となる公算です。特に丸紅は、新社長ということもあり注目されます。

柴田 竜之介
SBI証券 企業調査部(鉄鋼・非鉄、商社担当 アナリスト)
2018年4月に東海東京証券に新卒入社し、リテール営業に従事。2019年4月に東海東京調査センターに出向し、各種研修を経て、2020年10月より株式アナリストとして鉄鋼・非鉄セクターを担当開始。 2023年8月より現職。2024年の日経ヴェリタスアナリストランキングでは、鉄鋼・非鉄セクターで6位。景気循環などのマクロ的な視点を、分析に取り入れることに注力。
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