東京都心5区空室率は、大型供給一服と出社率回復により、貸手優位水準となる5%割れ水準に低下。今後は三菱地所(8802)等が入替や更新時に賃料引き上げに注力、ただ、長期の定期借家契約が増え、改善幅は緩やかになるとみる。一方、マンション販売など住宅販売は、建築費高騰や金利上昇により返済負担が増しており、共働き世帯のペアローンを使っても、ローン返済額は増加見通し。相対的に価格の安いオープンハウスグループ(3288)等の建売住宅、カチタス(8919)の中古住宅や、賃貸住宅への需要シフトが進むと考える。国内市場とは異なり、積水ハウス(1928)など大手ハウスメーカーが積極展開する米国事業は、金利低下が進めば、実需、投資需要とも堅調に推移しよう。

不動産・運輸インフレ本格化でコスト転嫁が問われる
- オフィス空室率が低下、賃料引き上げに注力、マンション価格高騰で建売・中古に需要
- 宅配大手など物流各社は価格転嫁が苦戦、鉄道各社は運賃値上げを活発化
- インバウンド需要は為替影響除いて拡大基調、訪日外客数6,000万人、消費単価引き上げへ
オフィス空室率が低下、賃料引き上げに注力、マンション価格高騰で建売・中古に需要
宅配大手など物流各社は価格転嫁が苦戦、鉄道各社は運賃値上げを活発化
物流各社は、物流2024年問題による労務費増加を受け、宅配大手が荷主に価格転嫁を図っているが、物量の回復が鈍い中で、ヤマトHD(9064)など業績回復が遅れている。SGHD(9143)の置き配による再配達抑制、霞ヶ関キャピタル(3498)の立体自動倉庫の導入、提携による拠点の有効活用など持続的なコスト削減が課題であろう。鉄道など旅客各社は出社率回復やインバウンド需要等により業績が回復傾向にあるが、人件費や修繕費などが増加、JR九州(9142)など運賃値上げが活発化。運賃に比べて料金設定の自由度が高い特急料金の引き上げ、DXを活用した機動的な割引などプライシング戦略により収益性向上の余地があろう。
インバウンド需要は為替影響除いて拡大基調、訪日外客数6,000万人、消費単価引き上げへ
西武HD(9024)など不動産・旅客各社のホテル事業、共立メンテナンス(9616)のインバウンド需要は順調に回復、2024年1~10月累計の訪日外客数は3,019万人と、コロナ前の2019年暦年(3,188万人)を上回るペースで推移、2030年政府目標の6,000万人に向けて、拡大基調が続くとみる。円安効果や宿泊・飲食などコト消費の拡大により2024年7~9月のインバウンド消費額は2019年同期比65%増の1.9兆円に拡大、為替動向を注視が必要だが、今後、消費単価の高い中国旅客が回復すれば日本空港ビルデング(9706)の免税など更なる拡大に注目。2025年の大阪万博、2029年の成田空港拡張(発着容量1.7倍)なども需要を押し上げよう。

小澤 公樹
SBI証券 企業調査部(住宅・不動産、建設、運輸、J-REIT担当 シニアアナリスト)
1987年に三洋証券に入社、1993年から不動産・運輸業界担当のアナリスト業務を開始。1998年に新日本証券(現みずほ証券)、1999年に国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。2020年6月にSBI証券に入社。主力企業に加え、不動産テックやインバウンド関連、EC物流など成長企業の調査に注力。最高順位は日経ヴェリタスアナリストランキングで不動産・住宅で3位(2014年)。
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