保険・証券・金融サービス吉と出るか、凶と出るか、2025年は金利のある世界へ

2024年:日本銀行が金融政策を転換

2013年の「量的・質的金融緩和」の導入後、日本銀行(日銀)の金融政策は、「マイナス金利政策」、「長短金利操作」などが追加され、いずれも緩和的な金融政策が継続しました。そのため、日本国内の金利は低い状態が、長期で続いていました。一方、2024年は、日銀が金融政策を大きく修正した1年でした。2024年3月に、「マイナス金利政策」を解除し、7月には政策金利を0.25%程度に引き上げる決定をしました。日銀は、2013年から続いた金融緩和的な政策を変更したため、国内金融市場では、約10年ぶりに「金利のある世界」に回帰しました。株式市場に目を転じれば、2024年2月に、日経平均株価が最高値を更新しました。これは1989年以来の事で、総じて活況な1年でした。

2025年:金利は「経済の体温計」、好循環に期待

(長期)金利は、「経済の体温計」と言われることがあります。伝統的には、先行きの景気が良くなりそうなら金利が上がり、景気が悪くなりそうなら金利が下がる傾向があるからです。景気が良くなる→物価が上がる→賃金が上がる→金利が上がるという、好循環が実現するのであれば、日本経済にとって、総じて良いと考えられます。保険会社や証券会社にとっても、資産運用利回りの上昇や、今までよりも魅力的な金利水準の商品提供など、金利上昇はポジティブな面があります。株式市場にとっても、好景気は株価を支える要因になるでしょう。2025年は金利上昇による「吉」な側面が実現するかに注目したいです。

2025年:リスク要因にも留意

一方、金利上昇による「凶」な側面には留意が必要です。例えば、金利が急上昇すれば、住宅ローンや企業の負債などの借入金利が上昇し、返済の負担が増加する可能性があります。また、東京商工リサーチなどの調査会社によれば、2024年の企業倒産件数は増加傾向にあります。一段の金利上昇により、倒産件数が一層、増加する展開には留意が必要です。ところで、2025年の干支は「巳年」です。相場格言は「辰巳天井」で、辰年と巳年に株価が天井をつけやすいと言われています。金利上昇以外にも、地政学リスクや国内外の不透明要因などにも留意したいものです。

大塚 亘

大塚 亘
SBI証券 企業調査部(保険・証券・金融サービス担当 シニアアナリスト)

1998年に野村證券に入社、支店営業を経て、2008年に野村證券エクイティ・リサーチ部に社内異動。2018年にJPモルガン証券の株式調査部に入社。
2023年6月からSBI証券の企業調査部にて現職。セルサイドアナリストとして、金融セクター(保険・証券・金融サービス)の調査経験は15年に及ぶ。
Institutional Investor誌や、日経ヴェリタスランキングでは常に上位にランクインしている。
マクロトップダウンのみではなく、ミクロボトムアップ分析による幅広い企業調査と銘柄発掘に強みを有する。

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