2024年の株式市場は日本の自動車株にとってジェットコースター相場となった。年初から最初の3-4ヶ月は急速な上昇相場で、トヨタやホンダなど上場来高値を更新した。多くの企業は 2024年3月期決算が最高益更新となり、米国販売が想定以上に堅調、値上げの浸透や大幅な円安によるプラス材料が加わった。これに伴い増配や積極的な自己株取得が実施され、政策保有株の大量売却も株価にプラスに働いた。がその後様相が一転する。4月新年度入りから夏場にかけて、ほぼ一貫して相場は下落。トヨタの挽回生産が遅れに遅れ、中国景気の更なる悪化があり、夏場から米国販売が更に激化、台数増でも販促費の大幅上昇が打ち消し、中間決算以降、下方修正が相次いだ。結局12月に入っての株価水準は、多くの自動車会社で年初の水準に逆戻り、ないしはそれを下回る、という状況となった。

自動車T&M Revolution(トランプ&マスクの大革命)に日本勢はどう対抗するのか
2024年度は前半最高値、後半は弱気相場
2025年はT&M Revolutionに注目
2025年はトランプ大統領の再任、これに伴うイーロン・マスク氏の政権入り、この2人が米国の今後を大きく変えるのか、この状況に、トヨタや他の日系自動車メーカーはどのように対応するのか、ここが肝となろう。トランプ次期大統領は選挙キャンペーン中から関税の大幅引き上げを訴え、IRAによるBEVへの$7,500補助金を撤廃、他の環境対策も大幅に緩和する方針だ。またイーロン・マスク氏が商業化しようとしている自動運転タクシーがらみの規制撤廃も視野に入る。足元BEV販売は中国を除いて、ほぼ全世界で減速しているが、マスク氏は気に掛ける様子もなく、テスラのCyber Cab本格商業化を狙う。トランプ氏とマスク氏による自動車市場の大革命、“T&M Revolution”、さてこれに日系企業はどのように対抗していくのか。
いよいよトヨタの挽回生産が始まった
ほぼ1年にわたって減産が続いたトヨタだが、いよいよ2024年末から挽回生産が始まった。大量の受注残を抱え作れば売れる状況のトヨタ、米国でもHEVが快走を続ける。中国やタイなど懸念材料もあるが、全世界での生産は1,000万台を超え過去最高を更新すると予想。米国でのIRA撤廃はHEV販売を加速させる可能性が高く、2024年後半に失速したトヨタに連敗の文字は無かろう。スズキは2024年度途中で増額修正した唯一の日系メーカーだが、インドでの順調な販売増により、引き続き好調な決算が続こう。ホンダは回復途上にあった四輪車の利益が足元停滞気味、BEVと電池への投資が重くやや失速気味。日産は非常に厳しい局面が続く。大リストラに加え、提携相手の模索を始めているとも報道され、ゴーン時代が始まった1998年を彷彿させる状況。メキシコ生産も多く、再編第2幕は不可避か。
2024/12/13時点

遠藤 功治
SBI証券 企業調査部(自動車、自動車部品、宇宙関連担当 チーフエグゼクティブアナリスト)
1984年に野村證券入社、以来、SGウォーバーグ、リーマンブラザーズ、クレディスイス他、欧米系の外資系投資銀行にて活躍、証券アナリスト歴は通算37年、うち33年間は自動車・自動車部品業界、3年間は電機・電子部品業界の担当として業界・企業分析に携わる。日経ヴェリタスアナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは、常に上位の評価を得る(1999年日経アナリストランキング自動車部門第1位・IIランキング2位)。国内外メディア出演・執筆活動も頻繁。2016年7月にSBI証券入社、ゼロから企業調査部を立ち上げると共に、引き続き自動車・自動車部品業界の調査・分析を担当。近年は、頻繁な海外出張を通じ、イスラエルやシリコンバレー・欧州等のスタートアップを中心に、自動運転やサイバーセキュリティー関連の分析も手掛ける。また今後は、宇宙関連企業のリサーチも担当する予定である。
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