2024年の米国株市場は好調なパフォーマンスになりました。CPI(消費者物価指数)の伸び鈍化と雇用鈍化を背景にFRBは9月に利下げに転換し、米国の金融政策は大きな転換期となりました。加えて、実質GDP成長率(前期比年率)は1-3月に1.6%成長と1%台へ落ち込みましたが、個人消費をけん引役に4-6月は3.0%成長、7-9月(改定値)は2.8%成長と景気後退を回避して回復基調にあり、ソフトランディング期待が米国株へのサポート材料になりました。企業業績もM7(マグニフィセント・セブン)中心に堅調で、さらに、11月の大統領選でトランプ前大統領が勝利するとトランプ・ラリーが株高持続を支援しました。結果、S&P500指数などの主要株価3指数は史上最高値圏で推移しています(12月12日時点、以下同じ)。S&P500セクター別(11業種)の2024年初来パフォーマンスはコミュニケーション・サービスや情報技術、一般消費財・サービス、金融の上げが目立ち、全面高となりました。このほか、ビットコインが10万ドルを突破したこともマーケットで話題となりました。個別株ではM7の一角を占めるエヌビディア(年初来で約2.8倍)、メタ プラットフォームズA(同78%高)、テスラ(同68%高)、アマゾン ドットコム(同51%高)の上げが目立ったほか、AI関連として恩恵が期待される電力株のビストラ(同3.8倍)やコンステレーション エナジー(同2倍)も人気化しました。なお、半導体のSOX指数は年前半にかけて好調でしたが、後半はレンジ相場で方向感が出にくい展開となりました。

外国株式2025年も総じて堅調な展開を想定(S&P500指数で10%程度の上昇を見込む)
2024年の振り返り(利下げ転換+ソフトランディング期待+M7&AI関連牽引)
2025年の見通し(トランプ次期政権の関税強化の影響がポイント)
2025年最大の注目ポイントはトランプ次期政権による中国やメキシコ、カナダへの関税強化計画が景気やインフレにどの程度影響を与えるのかという点にあると思われます。特に対中関税に関しては2018-19年の様に関税応酬になると市場のモメンタムが悪化する恐れがあるほか、関税によるインフレ高進が懸念されます。利益率の点から企業業績への影響が注視されるほか、インフレが高まれば金融政策への影響も生じる可能性があるため、CPIへのマーケットの関心は一段と高まると思われます。ただし、前回トランプ政権時においてCPIはそれほど高まりを見せなかったことや米国の財輸入における中国のウェイトが当時と比べて低下していることを考えると、前回よりも影響は小さくなる可能性があると考えられます。なお、IMFは2024年10月発表の世界経済見通しの中で、世界的に10%の追加関税があるケースでは米国GDP成長率を2025年で0.4%、26年で0.6%押し下げるとの見通しを示しています。
一方、ポジティブ面としては次のようなポイントが挙げられます。まず株価は「EPS×PER」で算出できますが、2025年のS&P500指数のEPS成長率は10%台の2桁増益が市場予想で見込まれており、PERを仮に一定とすると、10%程度の株価上昇は十分達成可能と思われます。また、過去10回の大統領選投票日から1年後のS&P500指数のパフォーマンスは総じて好調を示しており、2024年11月の大統領選を契機としたトランプ・ラリーによる米国株の好調な動きは2025年も持続できそうです。加えて、米国経済はソフトランディングに向かっていると思われますが、かつて米国が1995年にソフトランディングに成功したケースをみると、その翌年にあたる1996年のS&P500指数の上昇も約20%高と好調で、この点はマーケットで意識される可能性があります(1995年は約34%高)。なお、NYSE(NY証券取引所)は投資家の米国株へのニーズ対応として22時間取引に向けた計画を明らかにしています。一部報道では早ければ2025年中に実現するとの観測もあることから、世界のマネーが米国株に一層向かう好機になる可能性があります。
2025年の注目のテーマ、キーワードなど
◆前回トランプ政権1年目の好パフォーマンスセクター:前回トランプ政権1年目(2017年1月20日~18年1月19日)におけるS&P500指数の上昇はおよそ24%高でした。中でも、情報技術や金融、ヘルスケア、一般消費財・サービスの各セクターはS&P500指数をアウトパフォームする動きを見せたことから、今回もこれらセクターは注目される可能性があります。業績面でも情報技術とヘルスケアは全体を牽引する見通しです。金融はM&A活発化への期待が注目されそうです。関連するセクターETFの活用が投資アイデアとして有効と考えられます。
◆自社株買いと配当関連:自社株買いが回復の兆しを強めており、個別企業でも数百億ドル規模の自社株買い計画を発表しているケースもあります。こうした動きは業績に対する会社側の自信の表れや株価サポート材料としても注目できそうです。また、米国が利下げサイクルにあることから好配当や連続増配の配当関連銘柄もマーケットの関心を集めそうです。
◆M7、AI、ビットコイン関連:これらの関連銘柄は2024年の米国株市場で総じて投資家の注目を集めました。引き続きマーケットの関心が高いテーマであり、25年も注目に値すると考えられます。
◆米国内需関連:トランプ次期政権の始動により、米国第一主義がマーケットで意識される可能性があります。各種政策により米国経済の底堅さが注目される契機になる可能性があります。個人消費などの内需関連が関心を集めやすいと思われます。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

齊木 良
SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアナリスト(外国株担当)(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト)
名古屋大学経済学部卒業。東海東京証券において主に外国株プロモーション、外国株トレーディングに従事。機関投資家向けの日本株トレーディングにも携わる。米国の証券会社へのトレーニー、コロンビア大学ビジネススクール客員研究員等を経て2022年4月よりSBI証券投資情報部に所属。ファンダメンタルズとトレーディングの両面から米国株を分析する。
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