NISA新NISA 2年目は資産運用の50-50に注目

新NISA 1年目の傾向は?

日本証券業協会によると証券会社10社(大手5社とネット5社)による2024年1月から10月までの新NISAの累計口座開設件数は前年同期比1.7倍となりました。さらには成長投資枠とつみたて投資枠の1月から10月までの累計買付金額は、非課税枠の大幅拡大によって同3.8倍となりました。

NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年10月末時点)

新NISAでの同期間の買付金額の構成比を見ると、成長投資枠が72%、つみたて投資枠が28%です。つみたて投資枠は積立投資に限定されているため、あと2ヵ月間で構成比が上昇すると見込まれますが、概ね年間の非課税枠の割合(2対1)に近い数字となりそうです。
買付金額の構成比で成長投資枠の部分は株式(ETFとREITを含む)と投資信託の比率が58%と42%となっており、その58%の株式の部分は93%が国内株、7%が外国株となっています。これにより、成長投資枠とつみたて投資枠を合計した全体の割合は、株式の国内株の割合が39%、株式の外国株の割合が3%、投資信託が58%となっています。
投資信託の42%については、2024年の資金流入上位ファンドが米国株や全世界株といった海外株のファンドが多くなっているため、株式の投資においては国内株が9割程度、投資信託においては逆に海外株が8~9割程度になっているのではないかと推測されます。
新NISAで最も支持されたファンドの1つとして、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(以下、「オルカン」)があります。オルカンにおける国内株の比率は4.8%(2024年11月末)です。オルカンの国内株比率を考慮しても、新NISAの投資信託においては大部分が海外株(外貨建て資産)への投資となっていると予想されます。

新NISA 2年目は資産運用の50-50に注目!

新NISA 1年目の2024年は、ドジャースの大谷翔平選手が達成した50本塁打、50盗塁を指す「大谷50-50」が話題となりました。新NISA 2年目においては、「資産運用の50-50」が注目を集めるのではないかと予想します。
資産運用においての「50-50」とは、株式と債券に半分ずつ投資するバランス運用を指すことがあります。
12月2日、厚生労働省は日本の公的年金(年金積立金)の運用機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用利回りを0.2%引き上げる方針を明らかにしたとの報道がありました。GPIFは株式や債券の運用で、名目賃金の上昇率をどこまで上回ることができるかを「実質的な運用利回り」として基準に据えており、現在は1.7%となっている利回りを、見直し案では1.9%に引き上げるとしています。現在の基本ポートフォリオは国内株式・外国株式・国内債券・外国債券を25%ずつ、つまり株式50%、債券50%としていますが、利回り向上のために国内株式の比率が数%引き上げられるのではないかという観測があります。GPIFの運用資産額は約253兆円(2024年9月末)となっていることから、基本ポートフォリオの見直しによる国内株式比率の引き上げが実現されれば、国内株式の株価下支え要因になることが期待されます。また、「長期的な観点から必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする」GPIFの資産配分は、バランス運用の参考になるといえます。

オルカンは2024年7月から8月にかけての円高株安局面で約17%の基準価額下落を経験しました。その後は約3ヵ月をかけて、円安株高により基準価額は7月高値まで回復しましたが、資産の大部分をオルカンに投資している方は、2024年の夏はヒヤリとしたのではないでしょうか。
7月から8月の下落局面においては、株式や債券、REIT、金など複数の資産に投資するバランスファンドであれば、株式100%のオルカンよりも下落率は小さくなっていました。また、運用効率に優れた一部のバランスファンドについては、7月の高値までの回復がオルカンよりも早くなっているようです。

新NISA2年目は、年間の非課税枠360万円をフル活用するなどまとまった資金で、リスクを抑えて運用したい投資家にとっては、株式と債券にそれぞれ半分ずつ投資するようなバランスファンドが存在感を高めると予想します。
2025年は、日米の金利差が縮小した場合、長らく続いた円安傾向が一服し、円高に転じる可能性もあります。NISA口座に限らず、投資信託における株式以外の比率、外貨建て資産の比率がどう変わっていくのかに注目です。

川上 雅人

川上 雅人
SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト)

慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。
SBI証券「投資情報メディア」やマネー誌などで投資信託や資産運用(NISA等)に関する情報提供を行う。

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