23年末(終値141.02)から各国中銀の金融政策の変更(日銀⇒利上げ/欧米中銀⇒利下げ)が見込まれ、市場では130.00割れも視野に円高方向に向かうとの見方が優勢でした。しかし、新NISAやデジタル関連の円売りに加え、6月下旬には11月米大統領選挙に向けたトランプーバイデン両候補による第1回TV討論会でトランプ候補優勢が伝えられ、円キャリートレードの再燃とともに7/3には161.95へ上昇。ただ、7月雇用統計やISM製造業景気指数が市場予想を下回ったことから8/5には141.70へ急落。その後、日米株式市場の落ち着きとともに8/15に149.38へ反発したものの、9月FOMCでの利下げ開始観測を前に9/16には年初来安値139.58へ下落。その後、11月の米大統領選挙でトランプ候補が勝利したことを受け11/15に156.75へ反発したものの、期待先行で先走りとなった債券市場を含むトランプ・トレードの巻き戻しから11/29には150.00割れへ下落し、韓国の「非常戒厳」により12/3 には148.65へ円高が進行。現状は12/17-18のFOMC、18-19の日銀金融政策決定会合を控え150.00~155.00を中心に方向性を探る動きを続けています。

為替24年のドル円の振り返りと25年の2つの注目点
2024年を振り返る ~38年ぶりの円安で頭打ち~
トランプ政権 ~来年の米経済は期待外れとならないか~
トランプ次期政権は、ウクライナ支援に消極的姿勢を見せる中、中国の台頭を抑えることで「強いアメリカ」を復活させることを優先させると思われます。中国からの輸入抑制がアメリカ製造業の復活につながるか懐疑的な見方があるほか、減税策による成長率への寄与度は+0.5~1.0%程度であるのに対し、関税引上げや移民規制の影響により-0.8%から-1.2%になるとの試算もあります。また、減税効果が表れるのは26年以降であり、「強いアメリカ」への期待剥落、そしてインフレ再燃や財政悪化が住宅投資や設備投資に悪影響を及ぼす結果となれば、NY株式市場の調整売りにつながりかねません。さらに、中国への関税引上げに対する対抗措置など米中関係悪化による世界経済への影響も踏まえ、トランプ次期政権の掲げる「強いアメリカの復活」への失望が高まった場合の金融市場の混乱に注意が必要です。
日本が変わるために
会期中の臨時国会では補正予算の年内成立にメドが立つ中、新たな政治改革法案を巡り少数与党と野党との論戦が繰り広げられています。来年夏の参議院選挙を見据えて、「政界再編に向けた新たな枠組み」を示すことができるか、石破内閣が難局を打開し、政治を変えることができるかがカギになると思われます。また、トランプ次期大統領が唱える保護主義に対する対抗措置など米中覇権争いが深まると危惧される中、日本は対立構造に翻弄される状況から脱却し、全員参加型の国際秩序の重要性を提唱することが求められます。エネルギーや食糧の自給率を大幅に引き上げることも含め、世界の中で日本の明確な方針・方向性を明示できなければ、基調的な円安が大きく変わることはないと思われます。
あわせて、海外投資家に対する日本投資の魅力を発信するだけでなく、日銀の金融政策正常化が進展する環境を整えることができるか、政治を中心に日本が変わることができるか正念場の1年になるかもしれません。
SBIリクイディティ・マーケット社 中村 陽二
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