鉄鋼・非鉄金属脱アジアの成長戦略、生産体制の最適化に注目

昨年の振り返り

2024年は、業種ごとのパフォーマンスが異なった1年でした。鉄鋼セクターが弱かった一方、非鉄金属セクター、特に電線セクターが非常に好調でした。まず、電線セクターでは、(1)データセンターにおける生成AI投資の活況、(2)データセンター向け光部品などの出荷好調、(3)国内外における電力需要の伸長、等の追い風がありました。また、それが一時的なテーマとならず、実際に力強い業績として示された事も株価を押し上げました。次に鉄鋼セクターでは、(1)中国の鉄余りの継続、(2)下降トレンドの鉄鋼業の在庫循環、等から、好調であった2023年に反して踊り場となりました。国内鉄鋼受注も、製造業向け、非製造業向けいずれも弱含みでした。

2025年の展望

まず、鉄鋼セクターのリベンジがあるかどうかが注目されます。中国の鉄余りは解消しないと思われますが、国内高炉メーカーは(1)生産能力削減、(2)高付加価値鋼材へのシフト、(3)脱アジアを軸とする海外展開、等の収益改善施策に真摯に取り組んでいます。また特殊鋼メーカーでは、(1)自動車生産の回復、(2)産機・建機市場のボトムアウトを想定するならば、在庫循環の好転を背景とする増産効果が期待できそうです。次に非鉄金属では、2024年に大相場を形成した電線セクターがまず注目されるでしょう。データセンター投資の活況、好調な電力工事需要が続けば利益成長が予想されます。ただし市場の期待、バリュエーションも相当高くなっている点はやや留意点です。

2025年の注目のテーマ、キーワード

脱アジアの成長戦略、生産体制の再構築に注目しています。(1)脱アジアの成長戦略では、中国のデフレ傾向が目立つようになってきました。背景には過剰生産能力があり、鉄鋼・非鉄金属セクターも「安値攻勢」などの影響を受けています。いかに脱アジアで成長戦略を描けるのかが注目されるでしょう。(2)生産体制の再構築では、国内ではスリム化、海外ではサプライチェーンの見直しに注目しています。国内では人口減による内需不足が想像以上に加速しています。生産能力のスリム化などの議論も加速してきそうです。海外ではトランプ新政権による関税引上げなどをはじめ、分断化の動きがあります。最適生産体制、消費地への直接参入などの議論が進みそうです。

 柴田 竜之介

柴田 竜之介
SBI証券 企業調査部(鉄鋼・非鉄、商社担当 アナリスト)

2018年4月に東海東京証券に新卒入社し、リテール営業に従事。2019年4月に東海東京調査センターに出向し、各種研修を経て、2020年10月より株式アナリストとして鉄鋼・非鉄セクターを担当開始。 2023年8月より現職。2024年の日経ヴェリタスアナリストランキングでは、鉄鋼・非鉄セクターで6位。景気循環などのマクロ的な視点を、分析に取り入れることに注力。

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