2022年に引き続き、2023年も銀行セクターがTOPIXをアウトパフォームする年となった。グローバルバンクとの比較においても、米州、欧州の銀行をアウトパフォームした。
日本銀行は7月と9月にYCCの柔軟化を進め、長期金利は0.9%水準にまで上昇した。マイナス金利解除の期待が引き続き、銀行株の堅調さを支えた。しかし、それだけではない。3月に東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応をするようにとの意見を出したことで、ほとんどの上場銀行がPBR改善、ROE向上の施策や戦略を打ち出した。これも銀行株上昇の要因となったと考えられる。また、資材や人件費上昇に伴う運転資金や、DXや効率化のための設備投資資金の需要増加も、銀行株を買う材料となった。
銀行・金融2024年も銀行から目が離せない
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2023年の振り返り
2024年の展望
日本経済の緩やかな成長もあり、資金需要の堅調さは2024年も続くと思われる。また、まだまだPBR1倍に届かない銀行が大半であるので、PBR改善、ROE向上に対する銀行側の意識はさらに強くなるだろう。
銀行にとっては、日本銀行がマイナス金利を解除し、金利のある世界が戻ってくるという大きな変化が起きる可能性が高い。短期的には預金金利引上げによる資金調達コストの上昇、円貨債券の含み損の拡大が起こるだろう。金利の上昇によるメリットはそれよりも遅れてやってくる。つまり業績にはJカーブの影響が出るだろう。
政策金利が0%に戻った後、どこまで上がるかにも注目が集まる。また、預金の収益性が上がることで、預金をいかに集めるかも銀行間で競われることになるだろう。
2024年の注目のテーマ
2024年のテーマは、リテール金融であろう。金利の正常化によって、預金に注目が集まるであろう。銀行は旺盛な資金需要に応えるために、リテール預金を積み上げる必要がある。
一方で、1月から始まる新NISAは、顧客にとっての資産形成だけではなく、資産運用にも大きな変化をもたらすであろう。銀行、証券会社などは、顧客基盤と運用資産の拡大を図るための戦略を打ち出すと思われる。そこに決済サービスを付加する、ポイントエコシステムに取り込むといった、総合的なリテール金融のプラットフォームが作られていくだろう。そうしたプラットフォームは規模の拡大が先で、収益化は後からということになるだろう。
鮫島 豊喜
SBI証券 企業調査部(銀行業界担当 シニアアナリスト)
1983年にシティバンク東京支店に入行。1995年にSanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しバイサイドアナリストとしてスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。アナリストとして、20年以上一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式の立場から見てきた。マクロに連動する業界ではあるが各社のファンダメンタルズ分析も重視したリサーチを行う。米国コロンビア大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。
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