ストラテジー2024年相場の論点

2024年相場の最大の注目点は、日本の長期金利である。価格に大きな歪みがあると思われるからだ。株のPERに相当するような債券のバリュエーションは実質金利である。日本の実質金利(10年国債利回り-インフレ率)は低すぎる(日本のインフレ率としてコアコアCPIの前年同月比を使っている)。すなわち、債券のバリュエーションは高すぎる。2023年11月現在の実質金利は-3.3%、長期平均(1986年~)は1.4%、その差は4.7%ptである。それだけ、実質金利の上昇余地があると言っても過言ではない。

前例がある。2022年から2023年にかけての米国だ。2022年2月の米国の実質金利(10年国債利回り-インフレ率)は-3.7%であった(米国のインフレ率としてはコアPCEデフレータの前年同月比を使っている)。米国の実質金利の長期平均(1962年~)は2.6%である。米国の実質金利は、2022年2月の-3.7%を底に上昇に転じ2023年10月には1.5%に達した。上昇幅は5.2%ptであった。実質金利上昇の内訳は、名目金利(10年国債利回り)の上昇幅が3.1%pt、インフレ率の低下幅が2.1%ptであった。

意外に思われる方が多いかもしれないが、この間の米国は、インフレ率低下と長期金利上昇の組み合わせであった。日銀は、2024年末のインフレ率は1.9%まで低下すると予想している。仮に、そのとおりになったとしよう。インフレ率の低下幅は2.1%ptだ(4.0%⇒1.9%)。その場合でも、名目金利(10年国債利回り)が2.6%pt上昇しなければ、実質金利の上昇余地と指摘した4.7%ptに届かない。いずれにせよ、日本の長期金利が11月末の水準(0.7%)から2.6%ptも上昇すると、長期金利は3%を突破することになる。

実質金利の上昇というバリュエーション調整が進んだ米国と、これから起きるという日本の対比は重要だ。2022年2月から2023年10月に向けて日米金利差(米国の10年国債利回り-日本の10年国債利回り)が1.9%拡大(2.1%⇒4.0%)するなかで、日米相対株価(TOPIX/S&P500)は25%上昇した。日本株が25%もアウトパフォームしたわけだ。もうすでに始まっているが、2023年から2024年にかけては、この逆が起きるのではないか。日本の長期金利が上昇するなか、日本株がアンダーパフォームする展開を予想する。

北野 一

北野 一
SBI証券 金融調査部長(チーフストラテジスト)

1982年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。債券ディーラー、為替アナリストを経て、金融ビックバン後、東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)で株式ストラテジスト。2006年からJPモルガン証券、2013年からはバークレイズ証券にて日本株ストラテジーを担当。2016年からは、みずほ証券でエクイティ調査部長。2019年7月にSBI証券入社。日本株ストラテジストとして再スタート。

ゼロ革命 新NISAやるならSBI証券

ご注意事項

  • ・SBI証券の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI 証券WEB サイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。
    金融商品取引法等に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません