エレクトロニクス半導体市場は、2023年は調整局面、2024年は再成長へ向かうと予想

企業業績には好材料と悪材料が混在

2023年のエレクトロニクス企業の業績は好材料と悪材料が混在。好材料としては、半導体不足の解消に伴う自動車生産の回復、部材費、輸送費などのコスト上昇一服、製品値上げの浸透、円安などだ。一方、悪材料は、中国市場の減速、インフレ進行による耐久消費財に対する消費マインドの低下、データーセンター関連の部品需要や設備投資の回復遅れなどがあった。世界半導体出荷金額(出所:WSTS)は、2023年9月に単月ベースでの前年比伸び率が15ヵ月ぶりに転換した。巣籠景気の一巡により2022年年央から過剰在庫が発生。その後、パソコン用メモリーを中心に在庫調整が続いていたがようやく反転の兆しが見えてきた。

2024年の半導体市場はプラス成長へ転換

2023年年間の世界半導体市場は4年ぶりのマイナス成長が見込まれるが、2024年は再びプラス成長への回帰が見込めそうだ。回復の牽引役は、生成AI関連の先端ロジックやHBM(High Bandwidth Memory)の需要増やEV向けのパワー半導体の好調持続などだ。民生関連向けなどの在庫調整の進展も2024年後半の回復に寄与していくと見られる。リスクは中国市場の景気回復遅れ、米中貿易摩擦の激化に伴う先端品の中国への輸出制限の強化、AI以外のデータセンターの市場回復遅れなど。

PPAの改善に寄与するチップレット、「中工程」の高度化に注目

生成AIの活用の広がり、IoT化の進展、モビリティの高度化、ロボットの普及増などを背景に半導体の性能向上競争が止まる気配は見られない。環境対策への要求も一段と高まるため、高性能半導体でも省エネへの要求は高まる見込み。このため、Power(消費電力)、Performance(性能)、Area(チップ面積)の頭文字をとったPPAが重要なキーワードとなる。PPAの改善のために、幅広い顧客を対象としたASSP(application specific standard product)ではなく、ムダな機能を省いた特定の顧客向けにカスタマイズされたASIC(特定用途向けロジックIC)に対する需要増が期待される。ムーアの法則(微細化)だけではなく、チップレット技術など「中工程」の強化で高機能、省エネを目指す動きも加速していくと見られる。

和泉 美治

和泉 美治
SBI証券 企業調査部(エレクトロニクス、半導体・電子部品担当 シニアアナリスト)

1983年にエルコインターナショナル(現:京セラエルコ)に入社。1990年に英国バーミンガム大学にてMBAを取得。1991年よりUBS証券、JPモルガン証券の株式調査部で産業エレクトロニクス、民生エレクトロニクス、半導体・電子部品等の業界・企業分析に携わってきた。大型株に加え、アナリストカバレッジの少ない中小型の調査にも注力。公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト。2008年から2012年Institutional Investor誌アナリストランキング、日経ヴェリタスでも常に上位にランクイン。2018年4月より現職。

ゼロ革命 新NISAやるならSBI証券

ご注意事項

  • ・SBI証券の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI 証券WEB サイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。
    金融商品取引法等に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません