投資信託新NISAで問われる「投資家主権」、転換期に適切なアドバイスを

米国の金融政策の転換点

2022年から急速に引き上げられた米国の政策金利は、2023年7月にフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を年5.25~5.50%に引き上げて以来、年末まで据え置かれてきた。米国のインフレ率は低下してきており、景気の緩やかな減速によって2024年の半ばには、「利下げ」への政策転換が期待されている。

2023年の米国株式市場は、金融政策の転換によるソフトランディングを織り込み、年後半に向け上昇してきた。ただし、景気は明らかに減速しており、来年の相場は注意が必要だ。

新NISAのスタートで資産運用立国の正念場

新年とともに「新NISA」がスタートする。非課税限度額1,800万円で運用期間無期限という新制度によって、既存のNISA口座を活用している投資家は、一段と投資に前向きに取り組むことが期待される。問題は、投資未経験者をいかにして投資の世界に呼び込むのかだ。

政府は「資産運用立国」宣言を掲げ、1,000兆円以上という規模で眠っている個人の預貯金を運用に振り向け、社会資本が循環する豊かな社会の実現をめざしている。そのポイントは、「新NISA」による投資文化の普及と定着だ。日本株に上値期待があり、グローバルな債券金利も魅力的な水準にあるなど、投資を始める環境としては良いタイミングを迎えている。「投資家ファースト」の運用サービスが実行できるのか? 新制度のスタートとともにサービス提供者の姿勢が問われることになる。

「半導体」か「脱炭素」か?

米国で始まった「生成AI(人工知能)」市場は、向こう10年間で2022年に約400億ドルだった市場規模が約1.3兆ドルという30倍超に成長するという予測があるほど、強烈なインパクトがある。その市場を支えると期待される半導体メーカーのエヌビディアの株価は2023年に大きく上昇したが、企業収益が株価を後追いして拡大している。また、自動運転の実用化も進展するなど、当面の投資テーマとして「半導体関連」は大きな潮流になりそうだ。

一方、世界的な異常気象は、大規模な森林火災や旱魃など人命にかかわる災害を各地にもたらしている。温室効果ガスの排出削減をめざす「脱炭素」は待ったなしの緊急課題だ。機関投資家の間で進む「ESG投資」が一般個人の投資行動として広がりを見せるのかという点も注目される。

朝倉 智也

朝倉 智也
ウエルスアドバイザー 代表取締役社長

1989年慶應義塾大学卒。95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社を経て、98年ウエルスアドバイザー株式会社設立に参画し、2004年より現職。 第三者の投信評価機関として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。資産運用にかかわるセミナー講師を多数務め、各種メディアにおいても、個人投資家への投資教育、啓蒙活動を行う。
著書:『一生モノのファイナンス入門』(ダイヤモンド社)、『ものぐさ投資術』(PHP研究所)、『マイナス金利にも負けない究極の分散投資術』(朝日新聞出版)『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『つみたてNISA』(ダイヤモンド社)、『ものすごく真っ当で、ありえないほど簡単な お金の増やし方』(幻冬舎)、『怖がりの人ほど成功する! 丸投げ投資生活』(ナツメ社)、『お金の未来年表』(SBクリエイティブ)、「全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと」(ダイヤモンド社)、『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』、(ダイヤモンド社)『インフレ・円安からお金を守る「最強の投資」』、(ダイヤモンド社)、『投資のプロが明かす「私が50歳ならこう増やす!」』(幻冬舎)等。

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