為替23年のドル円の振り返りと24年の2つの注目

23年のドル円は円安進行後、11月から2ヵ月で急速な円高

‘22年11月の米消費者物価指数の鈍化、そして12月の日銀政策会合でのYCC変動幅拡大を受けドル円は、’22年11月の148円台から‘23年1月には127円台へ下落。しかし、日米金利差縮小が限られる中、3-4月に米地銀の一部が破綻するもFRBの金融引き締めは継続され、ドル円は130円近辺を下値に底堅く推移。植田日銀新総裁も緩和政策の継続に言及したこと、7月に米政策金利が5.50%まで上昇したことを受け、11月13日には151円92銭まで上昇。昨年に続き152円を前に介入警戒感が上値を抑制する中、米インフレ鈍化とともにFRBの利上げサイクル打ち止め観測が台頭。これに対し、日銀はYCCを7月、10月と2度にわたり柔軟化し形骸化。米FRBが引締めサイクル停止に向かう一方で日銀が金融政策正常化へ踏み出すとの思惑から12月7日には141円71銭まで急落する場面が見られるなど日米金融政策の今後が注目されるとともに、日本の政局混乱及び米大統領選の行方が24年の焦点となりそうです。

FRBの利下げ時期を探るヒント

FRBの使命は雇用の最大化と物価の安定ですが、23年11月失業率は3.7%へ改善し、1月から11月までの平均は3.63%と低位安定しています。そのため、FRBはインフレ抑制に専念できる状況にあり、FRBが「利下げ議論は時期尚早」としている根拠の一つとなっています。FF金利先物は24年3月の利下げ開始をも織り込んでいますが、失業率の低位安定を考慮せずインフレ鈍化に焦点を当てていることが、市場の見方とFRBとの認識の違いの一因かもしれません。そのため、FRBが利下げに動く理由付けのためには、雇用情勢の顕著な変化を注視する必要があります。求人件数、企業の設備投資など先行投資を積極的に行う姿勢に変化が見られるか否か、利下げのタイミングを計る前兆として注目する必要があります。

2024年の注目のテーマ、『日米政局の行方』

政治資金規正法を巡り、岸田政権の支持率が一段と低下、日本の政局は混迷を深めています。23年12月13日の臨時国会閉幕以降の東京地検特捜部の動き次第で24年1月開幕の通常国会が大きく荒れることが予想され、3月末に向けた予算関連法案の審議に影響が及ぶことも想定されます。一方、24年11月5日に大統領選挙が実施される米国では、トランプ前大統領の機密文書不正保管など4つの公判を控えています。それでも、24年7月の共和党大会に向けてトランプ氏の優位は動かないと見られており、民主党がバイデン大統領の2期目を阻止する本命不在のまま8月の党大会を迎えることになれば、4年前の再現となります。ウクライナ問題の長期化、パレスチナ問題、中国の景気減速と先行き不透明な情勢に米国の覇権が揺らぐことにならないか、日米関係の一段の強化が必要不可欠な状況下、両国の政治安定が図られるか、そして金融市場の不安定化を回避できるかが注目されます。

SBIリクイディティ・マーケット社 中村 陽二

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