化学・合繊注目テーマは、「LiB材料」・「水素」・「半導体後工程」

2023年の化学・合繊業界を振り返る

2023年の化学業界は、中国をはじめとした世界的な景気低迷による需要減退に加え、原料価格下落による在庫受払差の影響もあり、石油化学関連を中心に総合化学メーカーの業績が落ち込みました。半導体材料メーカーも、パソコン・スマートフォン需要減速と在庫調整の影響で収益が悪化しました。合繊メーカーは、衣料や自動車分野で市場の回復が進んだほか、構造改革などコスト削減策も寄与して、収益は改善しました。

2024年の化学・合繊業界の展望

2024年の化学・合繊業界ですが、総合化学においては、中期的な需要減速や競争激化およびGHG排出量削減の環境下、汎用石油化学事業での業界再編の動きが本格化するとみています。電子材料は、半導体市場が2024年から回復に転じ、先端半導体向けを中心に中期的な需要拡大に向けた材料開発や設備増強が加速する見通しです。ライフサイエンスでは、CDMO(バイオ医薬品開発・製造受託)、CRO(医薬品開発受託)事業における化学メーカーの存在感がさらに高まる年になると考えます。ニッチ市場でグローバルトップシェア製品を多く持つ中堅化学メーカーの収益環境は、相対的に堅調見通しです。

2024年の注目テーマは、「LiB材料」・「水素」・「半導体後工程」

2023年12月1日に米政府は、EV(電気自動車)を対象とした最大7,500ドル(約110万円)の購入支援策について、中国企業が生産した電池部材や重要鉱物を使っている場合は除外する方針を発表しました。車載電池や鉱物の生産では中国企業が大きなシェアを占めており、新方針は事実上、「脱中国」を目指したものとなります。今回の中国産材料を使ったEVに対する税優遇除外により、韓国・日本メーカー製のリチウムイオン電池(LiB)需要拡大が期待されます。特に韓国のLiBメーカーは米国で生産を拡大しているため、ここに「LiB材料」を供給している日本メーカーは需要拡大の恩恵を受けるとみています。また2024年は、世界のCO2排出量の約6割を占めるアジアのCO2削減に向け、日本の脱炭素技術や省エネルギー技術が注目されます。日本は太陽光や風力の適地が少なく、再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しいため、アンモニアや「水素」の活用が不可欠で、この分野においては日本が技術開発で先行しています。半導体では、前工程における回路の微細化が物理的限界を迎えつつあり、さらなる高機能化は日本メーカーが高シェアを有する「半導体後工程」材料による実装技術の進歩がカギとみています。

澤砥 正美

澤砥 正美
SBI証券 企業調査部(化学・合繊業界担当 シニアアナリスト)

1984年にサンダーバード国際経営大学院卒業後、米国化学大手の日本法人であるデュポン・ジャパンにて、日本の化学大手との合弁事業の設立・運営などに従事。1990年からは化学業界のアナリストに転じ、クレディ・スイスなどの外資系投資銀行にて活躍。30年間にわたり化学・合繊業界調査および企業分析に携わる。日経アナリストランキングやInstitutional Investorsランキングでは、常に上位の評価を得る(2007年日経アナリストランキング化学部門4位、Institutional Investorsランキング化学部門3位)。2017年6月より現職。アナリストカバレッジの少ない中小型銘柄の調査も担当。リチウムイオン電池材料、自動車軽量化素材、ライフサイエンス分野のリサーチにも注力している。

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