クオンツ・ESG2024年ファクターとESG投資の展望

スタイル・業種ファクター動向

リスク・リターンから見たスタイルの投資魅力度は、2023年9月に大きな転換点を迎えた。これまで強かった割安株は、ボラティリティが上場することにより投資魅力度がピークアウトし、低迷してきた成長株は、巻き戻していくことで投資魅力度が上昇するとみている。2024年は、ドル高円安で恩恵を受けてきた割安株が調整する可能性は高いが、内需成長株には追い風になるだろう。しかし、割安株の絶対的な投資魅力度の水準が引き続き高いとの認識があり、中核的存在である金融セクター、中型株、世界情勢次第では、その他運搬機械、プラント機械&エンジニアリング、金属等の景気敏感セクターで強い局面が発生すると見ている。

先行き不透明な「環境(E)」、いまどきの「社会(S)」投資の魅力

ESG投資では、エネルギー価格の高騰、人手不足、インフレを背景に、グリーンエネルギーの再定義化や投資の鈍化が起きている。ESGスマートベータの資金需給の観測では、2022年後半で資金が流失する傾向が強まり、2023年8月以降も加速したが、足元にかけて需給とパフォーマンスは回復基調にある。しかし、大統領選挙を控えた米国が、脱炭素社会に対する方向性を変える可能性はあり、「環境(E)」投資は資金需給や政策面から先行きに対する不透明感が強い。

今後は、個別企業レベルで丁寧に成長性を判断していくことによる、ESGクオリティ株への投資は有効であろう。2023年に政府が掲げた、女性活躍推進や男性の育児休業取得比率の引き上げ目標は、まさに日本が抱える人手不足や生産性の問題への解決策を反映している。これらのテーマに対して積極的に取り組んできた企業は、時代の変化を先取りした人的資本経営を実践してきており、利益率や資本効率は高い傾向がみられている。また、不祥事等による株価急落のリスクも低いとも言われる。
また、株価純資産倍率が1倍割れの企業への投資では、たとえ足元の「社会(S)」評価が低くても、企業文化の徹底変革や人的投資を積極化している場合では、中長期的に期待できる変革企業として魅力的かもしれない。上場企業の人的資本の情報開示が始まり、いよいよ企業の非財務情報から各社の社会性や特徴をみることができるようになってきた。今後、これらの点について精査していきたい。

波多野 紅美

波多野 紅美
SBI証券 金融調査部 チーフクオンツアナリスト

事業会社、外資系証券会社を経て、2010年MSCI入社、2019年6月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券より転籍。日経ヴェリタス誌ランキングは、2019年はテクニカルアナリスト7位とクオンツアナリスト8位。セールストレーディングや定量リサーチ分野で実務経験を積む。アナリスト業務では、主にESG投資や定量分析に従事する。ロンドンImperial College工学部、東京工業大学総合理工学部修士課程卒業。

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