2023年は新型コロナが需給バランスに与えたストレスがついに、概ね解消された年となった。世界的にインフレ率が大幅に低下し、ほとんどの国で賃金の上昇ペースも低下したため、各国の中央銀行は利上げを一時停止することが可能となった。
一方、金利が上昇したにもかかわらず、消費者は支出を続けた。これは企業の収益の伸びを支えるとともに、欧米における失業率が数十年ぶりの低水準となったことにつながった。世界経済は景気後退を回避し、特に米国経済は好調だった。
2023年の振り返り
2023年は新型コロナが需給バランスに与えたストレスがついに、概ね解消された年となった。世界的にインフレ率が大幅に低下し、ほとんどの国で賃金の上昇ペースも低下したため、各国の中央銀行は利上げを一時停止することが可能となった。
一方、金利が上昇したにもかかわらず、消費者は支出を続けた。これは企業の収益の伸びを支えるとともに、欧米における失業率が数十年ぶりの低水準となったことにつながった。世界経済は景気後退を回避し、特に米国経済は好調だった。
2024年の見通し
2024年に予想される主な変化は、成長の鈍化と金利の低下である。
個人消費は減速の兆しを見せており、クレジットカード残高と延滞件数は増加している。労働市場も平常時の水準に戻りつつあり、賃金の伸びは鈍化している。GDP成長率を見ると、欧州はすでに景気後退に陥っている可能性がある。
米国と欧州のインフレ率が現在3%前後となり低下傾向にあるなか、実質金利は数年ぶりに明確にプラスに転じた。これは、政府支出の減少や中央銀行のバランスシート縮小と相まって、ほとんどの国の経済にとって逆風となるだろう。
今後の注目ポイント
実質賃金の伸びと失業率の低さが消費者の支出を支えてきたが、足元で失業率が上昇していることは注目に値する。雇用が悪化すれば消費者の貯蓄志向が強まり支出が抑えられ、企業収益が悪化し、レイオフにつながるなど、負の連鎖が始まる可能性がある。
金利がゼロ水準近くまで低下する可能性は低く、企業は債務の借り換え時の資本コストが大幅に上昇することになる。これにより、入居率が新型コロナ前の水準を依然として下回っているオフィス不動産にさらなるストレスがかかる可能性がある。しかしながら、債務借り換えは、今後数年をかけて徐々に行われていく見込みとなっている。
政治や地政学的動向もマーケットに影響を与える可能性がある。2024年は米国と台湾で選挙が行われる年である。歴史的に見て、米国市場は不確実性と今後の導入される可能性のある新政策への対応などを背景に、選挙の投票日に近づくほどボラティリティが上昇する。
フィル・マッキントッシュ
ナスダック チーフエコノミスト
フィル・マッキントッシュはナスダックのチーフエコノミスト兼シニアバイスプレジデント。ナスダック入社前はKCG/Virtu Financialのトレーディング戦略/分析のヘッドを務めたほか、クレディ・スイスのトレーディング戦略のグローバル・ヘッド、カウンティ・インベストメント・マネジメントのインデックス・ポートフォリオのヘッドを務めた。また、KPMGでキャリアをスタートし、公認会計士でもある。
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