国内株式史上最高値更新のカギを握るのは個人投資家!?

割安な日本株に海外投資家が注目!

2023年の日本株は4月から6月にかけて大きく上昇しました。その主な買い手となっていたのは海外投資家でした。投資部門別売買動向によると、海外投資家は4月第1週から10週連続で日本株を買い越しており(現物+先物)、そうした中、日経平均は7/3に33,753円の高値に到達しました。

夏場以降、日経平均はボックス圏で推移しました。米国金利動向見合いの値動きとなる中、インフレ懸念で米国金利が上昇すると、ハイテク株などの成長株が軟調に推移し、日経平均は3万円台半ばまで下落する場面もありました。しかし、11月以降、米国金融政策において、利上げ打ち止めと早期利下げ転換への期待で、米国金利が大きく低下。成長株を中心に買い戻しの動きが強まるなか、日経平均は年末にかけて値を戻す展開となりました。

2024年の日本株は値動きの荒い展開?それとも・・・

2024年の日本株を占うべく外部環境に目を向けると、波乱材料が浮かび上がってきます。最大のリスクファクターは米国市場でしょう。2024年の米国市場は、経済とインフレが緩やかに減速するなか、金融政策は利下げ転換が見込まれています。いわゆるソフトランディングへの期待から、米国株が2024年も高値更新を予想する声が多いようです。ただ、注意しなければならないのは、こうした楽観シナリオから外れることです。予想よりもインフレが根強く、金融緩和が思うように進まなければ、金利上昇とともに株安が進むでしょう(逆金融相場)。逆に景気が“減速”ではなく“後退”(ハードランディング)となり、金融緩和のペースが想定よりも早くなるようであれば、金利低下を伴った株安になります(逆業績相場)。このどちらの展開にも陥らずソフトランディングを継続させることが、米国株はもとより日本株を含めた主要国株式市場を観る上で最重要となります。

また、米国では11月に大統領選挙が行われます。この選挙において対中国政策が選挙争点の1つになる可能性が高く、選挙を前に米中の対立が激しくなる可能性に注意する必要があると考えられます。さらに、その中国は、金融や不動産などで問題を多く抱える中、経済が底打ちから回復へ向かう道筋がはっきりしてきません。中国の景気鈍化がさらに長引くようであれば、日本の外需などに及ぼす影響が大きくなる可能性があるでしょう。
一方、日本の国内要因については引き続き期待が持てます。内需は、インバウンドなど経済正常化に伴う急回復は一服しましたが、個人消費をけん引役に景気回復が続くとの見方に変化はありません。昨年は、賃金上昇の動きが鮮明となりましたが、今年も春闘などを通じた賃上げの動きは続くでしょう。昨年は賃上げの動きよりも、生活必需品の値上げなど物価高によるマイナスの影響に目が行きがちでした。しかし、現状は円安や商品市況の上昇が一服しているため、物価高よりも賃金上昇による消費者センチメントの改善が顕著となることが期待されます。

個人投資家が順張りに!?

そして2024年の日本株で注目すべきマネーフローとなるのが、個人投資家の売買です。2024年は新NISA(少額投資非課税制度)のスタートに加え、一部証券会社による株式売買手数料無料化が、個人投資家の投資マネーを株式市場に呼び込むことが期待されます。こうした制度面等の変化に加え、本格的な脱デフレが視野に入ってきたことで、これまで株式相場の上昇時に売り主体となるなど“逆張り”傾向の強かった個人投資家が、“順張り”に転換する可能性があります。昨年から日本株上昇時の買い手であった海外投資家に、“順張り”の個人投資家マネーが加われば、日本株は上値追いとなることが想定されます。前述した外部環境によるリスクファクターが大きくならなければ、日経平均が1989年12月に付けた史上最高値(38,915円)超えも視野に入ると考えられます。

また、個人投資家や海外投資家のマネーを呼び込む投資テーマとなるのが、株主還元の動きです。2023年3月に東京証券取引所が低PBR企業に対し、企業価値の向上を要請したこともあり、企業価値の向上策として株主還元を強化する動きが広がっています。こうした動きに加えて2024年は買収防衛の観点からも企業価値の向上が急務になることが想定されます。最近、世界的に見れば企業のM&A(合併・買収)の動きが活発化してきているようです。2000年代初頭にも見られましたが、世界経済が行き詰まってくると、グローバルで業界再編の動きが出てきます。そうした中、競争力の高い商品・サービスを提供しているにも関わらず、資本効率が低く、割安株で放置されている日本企業は、円安により海外企業(または投資ファンド)が買収するためのコストが下がっており、有望な買収対象となっている可能性があります。財務体質が良好なキャッシュリッチ企業などを中心に、企業価値を高めるための取り組み(配当、自社株買い、MBO、日本企業同士のM&Aなど)が注目テーマになると考えられます。

淺井 一郎

淺井 一郎
SBI証券 投資情報部  シニア・ストラテジスト

北海道大学工学部卒。大和証券に約20年間在籍した後、2022年にSBI証券に入社。大和証券では主に個人投資家や機関投資家向けに投資情報を提供。日本株や米国株、欧州株など国内外の株式市場や為替市場などの分析を歴任し、幅広いマーケットに精通していることが強み。

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