自動車・自動車部品業界の2024年3月期業績は過去最高益を更新する見込みである。売上高合計は史上初めて100兆円を超え、営業利益も10兆円超えと見られる。これは半導体不足や新型コロナ影響による物流停滞などの問題がほぼ解消、米国を中心に新車需給は非常にタイトで販売価格が高騰、販促費は低水準のままで中古車価格も高値横ばい、貴金属や鉄鋼など原材料価格の高騰も一服、そこに対ドル150円などという大幅な円安が吹いたことが大きい。また、東証からの低PBR是正勧告などに答える形で、各社が大幅増配・自社株取得・政策保有株の売却などに動いたことから、トヨタ・ホンダ・デンソーなど、この業界を代表する銘柄が、相次いで上場来高値を更新した。
自動車・自動車部品2024年のメインテーマは、A:America、B:BEV、C:China、D:DX、E:Exchange Rate
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2023年度は過去最高益更新と上場来高値企業が続出
2024年の5つの鍵次第では、業績一転減益の可能性も
2024年のメインテーマはA:米国、B:バッテリーEV、C:中国、D:Dx、E:為替である。Aの米国だが、新車需要は堅調で2023年比微増の1,600万台程度の販売を予想する。平均価格が史上最高の5万ドル+で、SUV・ピックアップトラックを中心に製品構成も良い。大統領選で仮にトランプ氏が再選となれば、それまで民主党政権が進めてきたBEV促進策の多くが反故にされる可能性もある。そのB、バッテリーEVだが、日本車の出遅れがたびたび指摘される。ただ世界各地でBEVの販売は減速しており、唯一伸びているCの中国でもバナナのたたき売り状態で、数量は伸びるが大半が赤字ないしは大幅減益、株価も大きく下落している。日本車のBEV本格投入は2026年以降と見られ、そこで全固体電池やギガキャスト工法など、新しいテーマ満載のモデルが投入される。DのDxで車載OSや自動運転の進化が続き、設備投資やR&D・人件費は増加、そこへEの為替が円高へシフトすれば、2024年度の業績は一転減益に転じる可能性もある。
トヨタとテスラの時価総額、再逆転はあるのか
2020年にテスラが営業利益率でトヨタを逆転、ほぼ同時期に時価総額でもテスラがトヨタを抜く。2022年にはテスラの時価総額はトヨタの4倍まで拡大したが2023年度はトヨタが利益率でテスラを再逆転、時価総額の差も2倍まで縮小した。テスラは新型車や自動運転、人型ロボットやAIなど、先行投資が重く、先々回収ができるかどうかも危うい。そしてテスラは値引きを繰り返しながら台数を伸ばしているのに対し、トヨタは値上げをしながら台数を増やしている。少なくとも今後2-3年は、テスラがトヨタの利益率を超えるのは至難の業であろう。さすれば、トヨタの時価総額がテスラのそれを再逆転する日もあるかもしれない。バイデンからトランプへの転換で、BEVやその他政策の大幅な変更が予想されるこれからの数年間、闘うルールが変わるのであれば、抽斗は多く持っておきたい。BEV一択のテスラと、HEV・PHEVからBEV・FCVまで揃えるトヨタ、逆転はおおいにありうる。
遠藤 功治
SBI証券 企業調査部(自動車、AI・ロボット担当 シニアアナリスト)
1984年に野村證券入社、その後欧米系外資系投資銀行数社にて、通算の証券アナリスト歴は40年に上る。その大半を自動車・自動車部品業界の担当として業界・企業分析に携わる。日経アナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは、常に上位の評価を得る(1999年日経アナリストランキング自動車部門第1位)。2016年7月からSBI証券にて、企業調査部を立ち上げると共に、引き続き自動車・自動車部品のリサーチを担当、最近ではイスラエルやインド・シリコンバレー等のスタートアップ企業を中心に、自動運転(ADAS)・人工知能(AI)等の分析にも従事、また今後拡大が予想される、宇宙関連分野の企業発掘も手掛けている。
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