小売・レジャーインフレ継続か、デフレ再燃はあるか

2023年は、多くの小売・外食企業にインフレが追い風となった

多くの小売・外食企業にとって、2023年はつかの間の至福のときとなった。5類移行、リベンジ消費等による国内の堅調な消費に加え、インバウンドの急回復も加わり、旺盛な需要が続いた。人件費等の上昇は続いているものの、円安・原材料高、水道光熱費の上昇によるコスト上昇に一巡感が出てくる中で、コスト上昇分を上回る価格転嫁が進み、好調な業績に繋がった。消費者はインフレを許容、値上げをしたケースの多くで、客数の減少よりも、客単価の上昇が大きい状況が続いた。その裏で実質賃金の減少が続いており、一部の小売企業では値下げに踏み切るところも出始めており、どこまで消費者に値上げを許容してもらえるのか分水嶺が近づいている。

2024年はデフレ再燃に備えよ

物価上昇を上回る賃上げが進まなければ、節約志向が一段と強まってくる可能性が高い。リベンジ消費は一巡、消費者は次第に実質賃金の減少に耐えられなくなってくる。これまでのようには簡単に値上げは通らず、値上げ分を上回る客数減少や買上点数減少に悩まされる企業が増えてこよう。単価上昇に救われているだけで、客数を減らしている企業は、生き残れるかどうかの瀬戸際に追い込まれる可能性もある。すでに、大手小売や大手外食チェーンの中には、低価格商品を拡充、一部商品の値下げを行うなどの動きもみられ、価格対応を先取りする動きもみられる。小売・外食企業は、インフレに安住することなく、デフレ再燃への備えが必要となろう。

小売DXの真価が問われる1年に

2024年は小売DXの真価が問われる1年となろう。小売・外食各社は、DXへの取り組みが本格化してきている。流行りだからとか、他社がやっているからではなく、そのDXへの投資は、本当に投資金額を上回る効果があるのか、が問われよう。人手不足に加えて、人件費単価の上昇も避けられそうになく、DX化によって人員をいかに減らせるかが問われる。AI自動発注システムは、試行錯誤を繰り返していく中で精度も上がり、それなりの効果が見込めそうだ。一方で、外食などでみられる配膳ロボットや特急レーンは、業態などによって効果にバラツキがある。セルフレジ、レジカートなどは、RFIDの浸透との兼ね合いもありそうで、効果が読みにくい。企業実態に沿った投資が重要となろう。

田中 俊

田中 俊
SBI証券 企業調査部(小売、外食、旅行、ホテル業界担当 シニアアナリスト)

1988年に山種証券(現SMBC日興証券)入社、支店営業、投資情報部などを経て、山種調査センター(現SMBC日興証券)に出向。
以来、約20年に亘り、小売、レジャー・アミューズメント業界のアナリストとして、業界・企業分析に携わる。2016年12月より現職。トムソン・ロイター アナリスト・アワード・ジャパン2016にて、収益予想部門 ホテル・レストラン&レジャーで業種別1位。主力銘柄のカバーをしつつ、機動力を生かして、アナリストカバレッジの少ない地方銘柄、中小型銘柄の発掘にも注力。

ゼロ革命 新NISAやるならSBI証券

ご注意事項

  • ・SBI証券の取扱商品は、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。
    各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI 証券WEB サイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。
    金融商品取引法等に係る表示
  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性、完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても当社及び情報提供者は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
    重要な開示事項(利益相反関係等)について
  • ※掲載しているコンテンツ内でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません