放送・広告2024年はリテールメディアに注目

2023年の振り返り

2023年の広告市況は堅調に推移した。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、年初から10月までの広告業売上高累計は前年比横ばいの4.6兆円。主要な種目では、インターネット広告が前年比3%増の1.2兆円、テレビ広告が前年比4%減の1.0兆円。消費者の可処分時間変化、企業のデジタルシフトを要因としたテレビ広告市場の縮小傾向は変わらずだが、インターネット広告も前年に続き1桁成長に留まり、市場の成熟化が意識される。2000年以降の広告業売上高は名目GDP比1%前後で推移していたが、7‐9月は同0.96%と、コロナ禍ピークやリーマンショック後の水準まで低下。企業の広告予算縮小が目立った。株価においてはテレビ局が大きく上昇した。東証の、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応要請を受け、PBR水準やコンテンツの価値に注目が集まった。

2024年の展望

広告市況は2024年も堅調な推移を予想する。不透明な外部環境、インフレ、人件費等を背景とした企業の広告予算コントロールは継続する可能性がある。インターネット広告においては、ブラウザの世界シェア65%を占めるChromeが段階的に3rd Party Cookieを廃止する予定であることも懸念材料。ビジネスモデルの転換、既存事業の選択と集中、生産性向上に取り組む企業に注目したい。生成AIの活用、業界再編、親子上場の見直しも進もう。2023年に注目が集まったテレビ局については、利益率とROEの改善状況を確認したい。広告市況は年末にかけて明るい兆しも出てきている模様であり、景況感や企業の広告支出が大きく改善すれば業績の追い風となろう。

2024年の注目のキーワード「リテールメディア」

「リテールメディア」に注目したい。リテールメディアとは、EC事業者や実店舗を持つ小売事業者が購買データなどのデータを活用して手掛ける広告事業のこと。先行する米国の市場規模は2021年に311億ドル(前年比49%増)、米国広告市場全体の15%を占めたと推定され、2024年には611億ドルに拡大することが見込まれる。主なプレイヤーはAmazon、Walmart、The Home Depot、Criteo等。日本の市場規模は2021年に90億円と推定されるが、2026年には805億円まで拡大することが見込まれる。国内はまだ黎明期にあるが、EC事業者や小売事業者、その裏側を支援する企業の取組みに注目したい。

宝水 裕圭里

宝水 裕圭里
SBI証券 企業調査部(放送・広告担当 シニアアナリスト)

2009年に東海東京証券に入社し、事業法人営業、機関投資家営業に従事。2017年に東海東京調査センターに出向し、株式アナリストとして放送・広告セクターを担当。主力企業に加え、周辺の中小型株の発掘にも注力する。2022年11月より現職。
2022年の日経ヴェリタスアナリストランキングは放送・広告セクターで5位。

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